(書評)サイレント・マイノリティ 難民調査官

著者:下村敦史



難民申請をしているシリア人父娘の聞き取り調査を行っている東京入管の難民調査官・如月玲奈。しかし、シリアで迫害を受けている、という父に対し、娘は迫害などを受けていないと主張は食い違う。嘘をついているのは父か、娘か? さらに、差別問題を取材するジャーナリスト・山口は、シリア人殺害事件について興味を覚え……
難民調査官シリーズ第2作。
前作は、メインの謎が何なのかよくわからない中、暗中模索で物語が進展する形だったが、本作は冒頭から、食い違う父娘の証言というのが現れ、そこにシリア人殺害事件と、その妻の誘拐、という話が追加されていく形。
内戦、内乱、独裁国家とレジスタンス、そして、難民。そういうキーワードが出てくると、何かと正義と悪という二分論で語りがち。そして、その際、独裁者などはとかく、悪とされがち。しかし、実際に正義とは……?
独裁者とは言え、その中では平穏が保たれていたシリア。勿論、その中で、自由などには制限があったし、完全な自由国家とは言えなかった。そして、それに反発を覚える者がいたのも事実。しかし、いざ立ち上がった反独裁勢力は暴徒と化し、自らの主張に「賛同しない者」を「敵」とみなすように。さらに、その間隙を縫うように勢力を伸ばすテロ組織。「正義」とは何か? そういうものを、玲奈たちの視点だけでなく、実際、シリアに取材に行っている玲奈の元先輩であるジャーナリスト・長谷部の、現地でのやりとり、はたまた、「差別を許さない」という正義感で動く(ただし、それを強調するために、都合の良い形にストーリーを改変してしまう)ジャーナリスト・山口の視点が入るためによりクローズアップされていて、考えさせる。
そして、そのような中での、父娘の証言の食い違いと、殺人事件と誘拐事件が組み合わさったときの真相は……
真相についての部分は、それが明かされた時、「まさか!」というよりも、個人的には「そういえば、そうだった!」というのが強かった。日本という国にいて、日本の法律が身に染みているからこその見落とし。文字通り、盲点を突いたひっくり返し。
まぁ、ジャーナリストの山口がなんでそんなに都合よく色々と情報を知っているんだ? とか、途中で現れる人物がどこのスパイアクション映画のキャラか、と思うような活躍をするとか、ツッコミを入れたくなる部分がないわけではないけど、前作よりも物語の導入部で引きが強く、かつ、主題もハッキリ。そういう意味で、前作よりも読みやすい作品に仕上がっているのではないかと思う。

No.4426

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