(書評)双蛇密室

著者:早坂吝



幼いころから「二匹の蛇」の夢を見続けている刑事・藍川。幼い頃、蛇に咬まれたことがあり、それが原因であると思っていた彼だが、上木らいちの指摘により、これは殺人未遂であったことに気づく。両親に問い合わせた藍川が知ったのは、過去に起きた二つの密室事件だった……
なんつーか、「らしい」っちゃあらしい。この著者、このシリーズでなければ絶対に描けない作品だと思う。
作中で描かれる二つの密室事件。
一つは、藍川の両親が結婚する前に起きた事件。屋敷の敷地に建てられたプレハブ小屋。そこで起きたのは、妻に手を挙げる小説家と、その妻が蛇に咬まれ、小説家は死亡、妻は意識不明という事件。小説家は「咬まれた」という言葉を残して死亡。その隣の敷地では、各地の珍しい蛇を集める蛇愛好家がおり、その人物の飼っている蛇が逃げ出して……ということが考えられたが、事件の前には雨が降り、ぬかるんだ場所に蛇の這った痕跡はなかった。
もう一つが、藍川が過去、蛇に噛まれた事件。このとき、藍川がいたのはマンションの高層階。窓が開いていた、とは言え、偶然に蛇が入ることはない。しかし、ではどうやって? 藍川が住んでいた部屋の上下階から、というのも不可能というアリバイがあって……
この話、二つの密室が登場し、それぞれがどういう風に構築されていったのか? というのを考察する辺りは非常に真面目……というか、正統派な密室事件という感じで面白い。こんな言い方をすると何だけど、この作品が上木らいちシリーズである、ということを忘れてしまったくらい(笑) 作中に登場する人物の利害関係、人間関係からこうではないか、という動機面での推理、そして、らいちによって示された一応の解決は、(本格モノではありがちだけど)ちょっと無理かも知れないけど、「なるほど!」というもの。
ところが、そこにも矛盾点がある、と指摘されて明かされる本当の真相は……
すっげーバカミス!(笑)
こんなのあり得ない、とか、そういうことを語ることがバカバカしくなるようなすさまじいトリックで大笑い。そして、それで気づいたのが、「でも、これがこのシリーズだよな」ということでもあったりする。先に示されたような解決じゃ、このシリーズらしくない、ともいう。ぶっ飛んでいてこそ、というシリーズに相応しい真相と言えると思う。
そういう意味では、何気にこのシリーズに自分、毒されているなぁ、とも思う。

No.4427

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村


スポンサーサイト

COMMENT 0