(書評)がん消滅の罠 完全寛解の謎

著者:岩木一麻



日本がんセンターに勤める医師・夏目は、生命保険会社に勤める友人から、保険金の不正受給疑惑が持ち上がっていることを知る。末期癌により、余命宣告をされた患者が、生きているうちに保険金をもらえるリビングニーズ特約。その保険金を受け取ってからも生存し続けている。それどころか、その患者は、病巣がすっかり消滅していた。そして、そんなケースがすでに4件にも達していて……
第15回『このミス』大賞・大賞受賞作。
巻末にある選評では、評者が、「医療ミステリの大傑作」とか、「史上最高レベルの医療ミステリ」なんていう大絶賛の評者がいる一方で、「トリックはともかく……」という評者もいるというやや評価の割れた大賞作。読み終わって、確かに両者の評価の理由を理解することが出来た。
正直なところ、序盤はそもそも、話がどこへ行くのかすらもよくわからなくて「うーん……」と思うところが多かったりする。
冒頭、プロローグ的に描かれる10年前の出来事。そして、そこに続いては何かの思惑をもって動く湾岸医療センターなる病院の医師の描写。この文章の最初で書いた夏目が、というのは80頁を超えたあたりから。すごく前置きが長い、というのを感じる。そして、その後も、物語は、夏目だけでなく、湾岸医療センターの医師の視点、さらに、厚労省官僚で、癌が発見された男の視点などが入り乱れて展開していくことになっていく。序盤から、湾岸医療センターで「何か」が行われている、ということは明らか。しかし、物語上、それに気づく、ということがなく進むので序盤はちょっと長く感じられた。
物語が面白くなってくるのは中盤から。末期癌と診断されたにもかかわらず、それが消えてしまう。一体、それはなぜなのか? さらに、調べて判明したのは、湾岸医療センターが関わっており、その院長は、学生時代の夏目の恩師。彼が退官する前に言っていた「医師にはできないが、医師でなければできないこと」とは何なのか? そして、別視点で綴られる柳沢に対する行動に何の意味があるのか? 謎が次々と出てきてこの辺りから引き込まれた。
ただ、作品の性格上、医学的知識のない自分のような人間には、推理は不可能。さらに、最終的なところもややごちゃごちゃとしてしまった感じがする。
そういう意味で、トリックそのものは、実際にできるかどうかはともかくとして「うわっ!」という感じなのだけど、それ以外の場所についての欠点というのを感じざるを得なかった。

No.4429

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