(書評)モモンガの件はおまかせを

著者:似鳥鶏



楓ヶ丘動物園、その飼育員たちの奮闘を描いたシリーズ第4作。前4編を収録した短編集。
と言っても、動物園を舞台にした話はなくて、全てその周辺での話。そして、テーマとしては「動物を飼うことの責任」とでもいうべきものが貫かれているように感じられる。
その中で、ちょっとカラーが異なるのは1編目。バーベキューの買い出しに行ったところ道に迷ってしまった桃本。そこで、犬を連れた男性に道を尋ねるがどうにも様子がおかしい。そして、近所の公園から一人の少女が失踪していて……
これ、正直なところ、犯人に同情する(笑) 例えば、普通のおじさんが声をかけても警戒されるだけだけど、犬を連れていると……とか、そういう心理的な話とかも面白いのだけど、その完璧な計画を見破ったのは……。偶然、動物の専門家に出会って、その動物の行動のおかしさがバレなければ……。本当、可哀そう(笑)
表題作と言えるだろう3編目。『証人ただいま滑空中』。
アパートから飛び出してきたモモンガ。桃本たちは、飼い主と思われる人物の部屋へ届けに行くのだが、そこには死後、しばらくたったと思しき他殺体が……。
死後、しばらくが経過したと思しき遺体。しかし、モモンガのケージはつい最近まで手入れされた形跡。となると、犯人は事件を起こした後、モモンガの世話をするために通っていた? そして、2人の容疑者にはそれぞれアリバイが……
アリバイトリック的な見方とすると、結構、シンプルで明かされると肩透かしみたいな部分はある。ただ、問題をかき回すことになってしまったモモンガの存在。その背景に、2編目のエピソードと共通するものがあると考えると、続く4編目と繋がって、人間側の問題を浮き彫りにする話になっていると思う。
それでもって、4編目。『愛玩怪物』。山中の村で相次いで指摘される「怪物」の噂。山中を歩いていた男性の後をついてきた巨大な生物。野菜畑を荒らした者。大型の飼い犬の消失。そして、空き家に閉じ込めたにも関わらず消えてしまったソレ……
このエピソードの「怪物」の正体については、柴田哲孝氏のUMAシリーズとか、同じような題材になっている作品は多いし、現実の話としても似たような事例の話をしばしば聞くだけに、その部分でのカタルシスはあまりないような気がする。ただ、そうはいっても、日本という国でそのような存在を思い浮かべるのはなかなか難しい。そして、その背景には、動物を飼育する人間側の身勝手な態度というのがある、というのは共通。生物は生きている限りは成長する。しかし、「売り物」になるのは……。そのあと、どういうことが待っているのか、というのを考えた場合、こういうことも現実として起きているのだろう。
今回の短編集。謎解き、としては、既視感のある話だったりとかで、それほどビックリさせる要素はない。でも、1冊を通して、動物を買う側の責任、在り方。そいうものを問うてきている作品と言えるだろう。

No.4430

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村


スポンサーサイト

COMMENT 0