(書評)みんなの道徳解体新著

著者:パリオ・マッツァリーノ



道徳、が、学校教育における「科目」になることが決まった。しかし、そもそも「道徳」って何だろうか? 道徳の福読本を読んでみると、色々と奇妙なところがあって……
ちくまプリマー新書でこういう作品出すんだ……。まず、思ったのがそんなこと。
ちくまプリマー新書というと、どちらかというと子供向けに様々な物事の入門書を刊行しているレーベル。まぁ、『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』(万城目学著)や、『包帯クラブ』(天童荒太著)みたいな小説とかも出しているし、あまり「こうだ」と決めつけるのもよくないのだろうけど……
本書の構成として、まず、そんな道徳とは何なのか? そもそも、道徳心が落ちている、というのは本当なのかを考察する。そして、実際、副読本などを読み、そこにある何か奇妙な物語を紹介する。そして、歴史を少しかじった後、著者が読んで感じた疑問点。そして、著者の意見……というような形になっている。
こういうと何だけど、著者のツッコミは好き。副読本に記された物語。そもそも、そのシチュエーションは何なのだ? とか、今どきトランジスタラジオって何やねん! とか、確かに、と思うところはある。「うちゅうをうごかしているのはだれ?」に対する「誰でもないわ!」は大笑いだけど、そういう話ではないような気がするのだけど……(笑)
まぁ、読んでいて、同感、と思うところは多いのだけど、同時に結構、著者の個人的な意見とかが多くて、思想的に偏っているかな? と思うところがある。そういうのが、冒頭に書いた「このレーベルで出すんだ」という感想につながったわけである。
確かに、この手の話に出てくる「自然崇拝」とかには私も非常に疑問を覚える。というか、そもそも「自然」って何だ? って思うことが多い。例えば、田舎の風景で、一面の水田とかを見て「自然の風景」とかいう人がいる。いや、水田って思いっきり人工的な風景ですよ? とかね。また、「命は大事だ」とかいうけど、世論調査などをすると「死刑」賛成派が圧倒的な多数になる。その矛盾は何なのだ? とか。そういう意味で、読んで色々と考えることができる書籍ではあるのだけど……ただ、本の内容からちょっと距離を置いて読む癖がついていないうちだと面倒なことになるかな? って思う。
ちなみに、最終章に出てくる「命の教育」なのだけど……私は「命の教育」をすることには反対しないけど、それに「犯罪防止」などの効果を求めるのは無茶だろうと思っている。何かのはずみで、というのはともかくとして、計画的に自殺とか、殺人を犯す人って「命の大切さ」を知らないとは思えないんから。「人は死んだら生き返らない」そんなことは知っている。だからこそ、自殺や殺人を選ぶはずだ、と。だって、「死んでも生き返る」なら、計画的に自殺や殺人をしようとはしないでしょ? 意味ないもの。
私自身は、道徳の教科化には反対の立場である。そういう立場の人間として、著者のツッコミは痛快である。ただ、著者の個人的な見解などが多いので、その辺りを考慮しなければならないと思う。

No.4432

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