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(書評)君と四度目の学園祭

著者:天音マサキ



高校2年の秋、俺、刻谷結羽太は幼馴染の久遠が学園祭で好きな人に告白する、という噂を耳にする。一番、近くにいた少女が遠くへ行ってしまう。そんな焦燥の中、自分の久遠への想いを自覚していく。しかし、久遠の様子がおかしくて……
『主人公が実はヒロイン』とあとがきであるけど、物語としては確かにそんな感じ。
タイトル、さらに言うと、作中にしばしば含まれる久遠視点の物語によって、彼女がタイムリープをしていること。さらに、そのタイムリープをすることで、結羽太の危機を救っている、というのが示唆される。一方で、なぜ、それが起きているのか、とか、そういうものはよくわからないまま。
一方で、物語の中心となるのは結羽太視点での物語。幼馴染である久遠が、誰かに告白する、という噂。それが誰なのかわからないが、そのことが自分自身の気持ちに気づくきっかけとなる。だからこそ、久遠へ告白をしようとするが、奇妙な出来事が……
久遠のことでやきもきする結羽太の気持ちと、奇妙な出来事。それが核になるわけだけど……ちょっと核となるものが、作者と読者、両サイドでずれてしまったのかな? と感じられてしまった。というのは、久遠のパート、さらには作中で周囲の面々が示唆するように普段の態度から、久遠の想い人が誰なのかは明らか。その中で、結羽太がやきもきとしている姿が延々と見せつけられるとちょっと辛いな、と感じたり。一方で、読者として気になる、なぜ結羽太は死に取りつかれているのか? どうすれば、その状況から脱することが出来るのか? この辺りについてはあまりよくわからないままに終わってしまう。それでも、終盤、ちゃんと盛り上がってくるあたりは流石なのだけど……
そういうところを懸案すると、最終的に、主人公が実はヒロインである物語だ、っていう著者の言葉がしっくり来てしまう、という不思議な読後感になった(笑)

No.4437

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