(書評)2時間の学習効果が消える! やってはいけない脳の習慣 小中高生7万人の衝撃レポート

著者:横田晋務
監修:川島隆太



毎日2時間、勉強をしても、4時間以上スマホを使うと、全く勉強をしていない生徒と同じ成績になってしまう! 大規模な調査から、そんなことが判明した。なぜ、そうなるのか? 脳科学の知見から解説する書……らしい。
本書は仙台市教育委員会が行っている「標準学力調査」の試験結果と、同時に行った生活習慣などのアンケート調査の結果をクロス集計したものについて、脳科学の知見から、こうであると解説を加える構成。一言で感想を言うと、「ものすごく粗雑な議論に終始している」という感じだろうか。
まず、本書の冒頭で書いた、「毎日2時間、勉強をしているけど、スマホを4時間以上使う生徒」は「殆ど勉強をしていない生徒」より成績が悪い、っていうもの。これを読んだとき、最初に浮かんだのは疑問点。それは、「一日って24時間しかないよな?」ということ。
自分が中学生だった時の時間の使い方を思い浮かべてみたのだけど……

・睡眠時間    8時間
・学校の授業時間 7時間
・学校の部活時間 2時間
・通学時間    1時間
・食事・入浴時間 1時間

という感じになる。
これで19時間である。そこに「スマホが4時間」「勉強が2時間」が加わったら25時間になってしまう。勿論、上に書いたのは無駄を一切省いた形であって、例えば「風呂に入ろうと思ったら、親が入っていたから10分間待った」とか、「寝起きに5分間、何もせずにぼ~っとしていた」とか、そういう時間を加えれば、もっと時間が減ってしまうはず。勿論、私という一個人の経験を平均と呼ぶわけにはいかないだろう。しかし、極端に特殊な中学生の生活スタイルではないと思う。しかし、それでは、スマホが4時間で勉強が2時間を絞り出すことが出来ないのである。仮に部活動の時間なければ2時間減るから入れられるかもしれない。でも、じゃあ、例えば、テレビを見ている時間とか、放課後に友達と遊んでいる時間とか、そういうものを入れる余裕はない。そんなタイトな生活をしている学生がそんなにいるのかな? という感じである。
で、実際、読み進めてみると、「勉強をしていても、スマホからSNSのメッセージ通知などがくると気になってしまう。見てしまう」なんていうことが書かれている。何てことはない。勉強を2時間って、スマホなどをしながらの「ながら勉強」でしかない、ということ。スマホ4時間も何かをしながらを含んでいる、ということ。
で、そう考えると、著者が前提としている「勉強時間が長いほど、成績が良い」云々もどうかと思えてくる。スマホの電源を切り、他のことが出来ないような状況でするのならば、2時間、3時間と増えた方が成績があるように思う。でも、スマホなどをしながら、というのがあるなら、下手をすれば、「真面目にやれば、10分、20分で終わるような内容を2時間もダラダラとやっているだけ」なんてこともあるのではないだろうか? また、普段、スマホをいじるなどして自宅での勉強はおろか、学校でも勉強をせず、勉強が全くできないので、無理矢理、塾などに行かされている、なんてことだってあるかも知れない。ただ、「勉強」「勉強時間」というけど、その中身を考慮する必要があるのではないだろうか? 少なくとも、本書で記された内容で、「勉強の効果が打ち消される」というのには疑問を覚える。そして、同じことは、ゲームの時間、などにも言える。
さらに、そのほか、朝食とか、就寝時間とか、そういうものについて「脳科学の見地から」と解説していくのだが、これも、どこまで本当なのか? という疑問が湧く。
例えば、朝食を抜く子供は成績が悪い。朝食を食べている子供でも、パン食よりご飯食。主食だけより、色々なおかず。それを脳について、栄養学についてで語るのだけど……まぁ、まったく影響がないとは言わない。でも、そのほかの生活習慣とかの影響もないとは言い切れないのでは? 朝食すら用意しない親と、朝食用にご飯を炊き、目玉焼きでも、干物でも、みそ汁でも……おかずをつくる親。どちらが教育熱心かはいわずもがなだろう。まして、肥満の子供は学力があまりよくない。でも、だからと言って一気に痩せるようなことをしてもよくない、なんていう例は脳が云々じゃなくて、肥満にならず、理想的な体型を維持できるよう子供の栄養管理とかがしっかりできている家庭は成績が良い、ってことでしょ? 繰り返しになるけど、脳云々の部分が全くないとは言わない。でも、それ以外の部分が多いんじゃないかな? と思えてならない。
で、この手の論で、私が最も危惧するのは、こういう書を読んだことで、「じゃあ、スマホを与えなければいいんだ」とか、「朝食さえ出せばいいんだ」とか、そういう短絡的思考に陥る人が出てしまうこと。実際、ネット書店のレビューとかを見ると、そういうことを言っている人がちらほらと見える。
スマホ使用やら何やらを自由にやらせよ! とは言わない。そして、一応、著者も生活習慣全体が大事と言ってはいる。でも、スマホをすると学習効果が消される、とか、朝食を抜くと成績が下がる、とか、そういう一部分を切り抜いたセンセーショナルなものを取り上げる、というのは生活習慣全体というものを感じづらくしてしまうのではないかと思えてならない。

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