(書評)シマイチ古道具商 春夏冬人情ものがたり

著者:蓮見恭子



生活を立て直すため、大阪・堺にある夫の実家「島市古道具商」へと引っ越した透子たち一家。十数年間、社会に出ていなかった透子。慣れない店での暮らしに四苦八苦しながらも、義父の市蔵や、道具に集う人々の想いに触れて……
なんか、ちょっと思っていたのと違った印象。
新潮文庫nex。普段の新潮文庫と比べても、どちらかというと若者向けレーベルとして刊行されており、店などを舞台とした作品でも、「温かさ」を前面に出した作品が多い感じ。しかし、この作品の場合、最終的に収まるべきところには収まっているものの、「しっとり」とした印象を強く抱かせる作品になっている。
というのも、物語の根本には、透子の劣等感とでもいうべきものが常に横たわっているため。早くして母が亡くなり、父ともあまり良好とは言い難い関係の中で死別。教師であった夫・壮市と結婚し、その家庭で暮らしてきたものの、夫は体調を崩して退職。社会経験がない自分では生活を支えることが出来ず、夫の実家へと転がり込んだことでより、それが強くなってしまう。しかも、当然のことながら、透子は古道具、骨董といったものについての知識はない。
こういうと何だけど、そんな状況なんで、透子のウジウジとした態度が続いていて、結構、疲れる(笑) そんな中で、茶会で使う香合、徳利、陶片……などを巡っての人々の行動を目の当たりにして……
こういうと何だけど、それぞれの家で、喧嘩などもあるし、その関係が綺麗に修復した、なんていうこともない。でも、ちょっとした変化などはあり、新たな人間関係が構築されることもある。綺麗さ、とは違う。でも、だからこそ、現実的な人間関係の移り変わりとでもいうべきものが描かれているのかな? と思う。
そして、そんな中で訪れた古道具商の危機。その中で透子が知った、理想化していた母の失態であり、両親の関係。それを乗り越えて……
先に書いたエピソードがあるからこそ、この透子の両親についての話がすんなりと受け入れられたのだろうし、一歩を踏み出せたのだろう。そういうステップをしっかりと踏んだ、派手さはないけどしっかりとした物語だと思う。

No.4445

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