(書評)錆びた太陽

著者:恩田陸



「最後の事故」により人間が立ち入ることが出来なくなった地域。そこは、人工知能によって制御されたロボ「ウルトラ・エイト」が保守点検を担っていた。そんなところへ、一人の女性が訪れる。国税庁から来た、というその女性・財護徳子は制限区域の実態調査を行う、というのだが……
前作の『失われた地図』もそうなのだけど、本作も……変な作品だなぁ!
著者は1970年代くらいのテレビネタとか、そういうのが好き、みたいなものを以前に読んだことがあったのだけど、本作は、そういうのがまず色々と出ている。ロボットたちの愛称「ウルトラ・エイト」は、『ウルトラセブン』のパロディみたいなものだし(しかも、著作権的に云々とかまで言っちゃってる)、その面々の名前は『太陽に吠えろ』に出てくる刑事たちのそれ。乗り込む車は「サンダーバード2号」。そして、そんな名前が付けられたロボットの一人・ボスが徳子らに振り回されながら地域を巡り、そして、思わぬ形に話が進んでいく様が描かれる。
突如やってきた徳子。彼女が実態調査としてやってきて、そこで回る中で目の当たりにするのは、ゾンビのような存在である「マルピー」。また、かつての飛行場後には、帯電していて、ちょっとした刺激で爆発する「青球」が大量に集められていて、何かをしようとしている形跡が見える。さらには、区域との境界に住んでいた一家の失踪事件に、政府の大いなる陰謀まで話が広がっていく……
こうかくと、名前はともかく、シリアスな話かな? と思われるかもしれないけど、基本的には徳子の思わぬ行動にボスたちが振り回され、しかも、思わぬ事実に驚く、という感じで、どちらかと言えば明るい雰囲気。だって、マルピーに意思があるっぽい、とわかったら「マルピーから税金を取れないだろうか?」と言い出したら「はい?」って感じになるでしょ?
逆に言うと、敢えてそうすることで、人間の弱さとかを表しているのかな? とも思う。ロボット三原則とか、そういうものが出てくるのだけど、その中で、人間というのは迷いやすく、間違える存在。現在の、この地域が出来たのも人間の前科。そんな話がしばしば出てくるため。ある意味、福島の原発事故の後遺症とか、そういうのをさらに大規模に描いた話のように感じる。それを発表したのが朝日新聞というのも含めて。
結局、著者の作品らしく壮大な風呂敷を広げて、畳み方はアッサリではある。ただ、最後の最後で思わぬ形で徳子が「仕事」を完了させるオチに大笑い。
変な作品ではあるけど、著者らしさをこれでもかと味わえる作品じゃないかと思う。

No.4446

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COMMENT 1

苗坊  2017, 07. 17 [Mon] 11:47

こんにちは^^
本当に、ヘンな作品ですよね~。
「蜜蜂と遠雷」を読んで恩田さんに興味を持った方が読んだらびっくりしますよね。
反応を知りたいところではありますが^m^
確かに近未来の話なのにどことなく昭和を感じるところがあったりして、そこが恩田さんらしい雰囲気が出ているなと思いました。
徳子の存在が初めはうるさいというか疎ましいというかあまり好きになれない感じでしたが、だんだん愛着がわいてきました^^ロボットたちとの関わりも良かったです。
徳子の仕事のオチは私も笑いました。

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