(書評)トリア・ルーセントが人間になるまで

著者:三田千恵



病に倒れた父の治療のため、兄からサルバドールからルーセントという薬を入手するよう命じられたジンドラン王国第2皇子のランス。ところが、そこに現れたのは白い肌に銀色の髪、青い瞳を持った少女トリア・ルーセント。自らを「薬」というトリア、そして、その護衛ロサと共に王都を目指すことになるのだが、ロサは「トリアに恋をさせてほしい」と言い出して……
前作の『リンドウにさよならを』もそうなのだけど、著者の作品に出てくる男性キャラって、どちらかというとリア充な奴が多いな、と思ったり。本作の主人公ランスにしても、チャラい、とか、そういうキャラではないにしても、城下などで女性と浮名を流している存在。しかも、ちょっとした勘違いから、とは言え、いきなりトリアに手を出そうとするし。ボーイ・ミーツ・ガール作品であり、だんだんとトリアのことが心の底から……という物語の主人公としてはちょっと珍しいタイプを持ってきたように感じる。
てなわけで、物語としては、ランスが、トリア、ロサと共に、父である国王を治すため、治療薬の材料を集めつつ王都を目指す物語。そして、ロサの言葉ではないけど、その中で、ランスが、そして、トリアがそれぞれ気持ちを通じ合わせていく。しかし、「ルーセント」であるトリアには過酷な宿命があって……
「自分は薬だから」と、自分の気持ちとか、そういうものを押し殺していたトリア。それが、旅を続け、「ルーセントとして」ではなく、「一人の人間」としてランスに扱われる中で徐々に感情などを表に出すようになっていく。王道な物語ではあるのだけど、それをしっかりと、丁寧に描いてくれるので感情移入できる、というのは長所だろう。
ただ……王位継承をめぐってのランス、兄、姉という兄妹の出生の秘密って物語上、必要ってあったかな? 王が病。その後継者を巡って、色々な思惑が巡るのは当然だと思うし、また、ランス自身は自分よりも兄か姉が王になるべきだと思っている、というのもわかる。しかし、終盤にいきなり「実は~」という暴露が挿入されても……。そもそも、そのことが物語の軸となる部分に寄与しているかというと、そうとは思えない。なんで、こんなのを入れたのだろう?
王道なボーイ・ミーツ・ガールものとして楽しめただけに、終盤に挿入された王位をめぐる秘密の意味不明さが気になってしまった。

No.4447

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