(書評)ピエロがいる街

著者:横関大



大手製薬会社の工場が撤退し、経済的な苦境に立たされた兜市。就職活動がなかなか上手くいかない大学生の稜の前に現れたのは、顔を白く塗ったピエロ。願い事を尋ねられ、就職したい旨を語った彼は、なぜかピエロの助手に抜擢されてしまう。一方、市役所秘書課に勤務する比南子。「会いに行ける市長」のスローガンを掲げる市長のもとには次々と市民が訪れるが、そんなある日、後援会長が何者かに殺害される、という事件が発生して……
こういう言い方は何だけど、安心の横関ブランドの作品だな、という印象。
物語は、冒頭に書いたように、ピエロの助手になってしまった稜と市長の秘書として市長の身のまわりの世話をする比南子の視点で綴られる。
その中で、動きが大きいのは、稜のパート。ピエロの助手、という奇妙な仕事をすることになったのだが、その助手としての仕事は、町の中で起きる様々なトラブルを解決するトラブルシューター。飼い犬が迷子になってしまった子供のため、その犬を見つけて届ける。常勤の外科医がいなくなってしまい、困っている患者たちのために、外科医を探してくる。さらには、大雨で孤立してしまった子供たちの救助。そして、その行動がやがて殺人の疑惑を持たれた市長の無実の証明……。いつも通り、上手く行き過ぎとは言え、ピエロが口にする、自分と出会った「誰か」を幸せにしたい。
一方の比南子パートは一貫して「冷や冷や」という印象。そもそも、町の雇用を支えていた工場の撤退。そこに降ってわいた後援会長の殺人事件に、公費流用疑惑。当然、議会は大いに反発し、マスコミもどんどん疑惑を高めていく。そんな状況でも、泰然自若というか、冷静というか、何も語らずにいる市長。頭のいい人であるのは間違いないし、町のことを考えているのも事実。しかし、何も語らない。市長は一体、何を考えているのか? 勿論、市民からの突き上げ、とか、そういう事情もあるわけだけど、それ以上に、純粋に「どうするんだろう?」という想いを比南子と一緒に感じることとなった。
そして、その結末……
殺人の実行犯については、そこまでうまくいくか? と思うところはある。ただ、作中の仕掛け。プロローグとなる部分が意味していたもの。作中の仕掛け。それがしっかりとまとまり、ハッピーな結末へ。
上手く行き過ぎかもしれない。けれども、物語の人々がそれぞれ幸せになる。そして、そんな結末を読んで、読者も幸せな気分になれる。作中のピエロは、関わった人を幸せに、というけれども、それは物語を読んだ読者もまた、という風に言えるように思う。

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  •  『ピエロがいる街』 横関大
  • 嫁さんが図書館で借りてきていた、「横関大」のミステリ作品『ピエロがいる街』を拝借して読みました。 [ピエロがいる街] 「横関大」の作品は、5年近く前に読んだデビュー作で江戸川乱歩賞受賞作の『再会』以来なので久しぶりですね。 -----story------------- 兜市役所の秘書課に勤務する「比南子」は困っていた。 スローガンに「開かれた市政、会いに行ける市長」を掲げる「宍戸市長」...
  • 2017.09.21 (Thu) 00:00 | じゅうのblog