(書評)誰かが見ている

著者:宮西真冬



第52回メフィスト賞受賞作。
一応、歴代のメフィスト賞受賞作を全て読んでいる私なのだけど、講談社ノベルスから刊行されるのが通常(もっとも、ここ数年は新書版と単行本が半々くらいの比率だけど)。その中で、ハードカバーの単行本で刊行された、というのは、やはり、この作品が本格ミステリとか、キャラクター小説的な要素が薄い作風だから、ということになるのかな? というのがまず思ったこと。
物語は4人の女性の視点で綴られる。そして、そのうちの、中心となる3人が、それぞれが、ストレスにさらされ、強く負の感情を抱いている。
保育園児の子供・夏紀を育てている千夏子。かつて、不妊治療について書いたブログで多くの読者を獲得したことがあるが、いざ、子供が生まれて以降、その子供への違和感に苛まれ、夏紀に対し愛情を注げないでいる。そんなとき、偶然知り合った母子の家を、自分であると偽ってブログを綴り始める。
5歳年下の夫に求愛され、結婚をした結子。しかし、夫から身体を求められることはなく、セックスレス状態に。周囲から「子供は?」と尋ねられる日々の中、夫は自分に飽き、浮気をしているのではないかと疑いだす。
保育園の保母である春花。しかし、自分勝手な母親たちに振り回され、さらに、職場のボス的な保母からすべて面倒をしょい込まれることにストレスを感じている。そんな彼女の憂さ晴らしは、「痛い」保護者を糾弾する匿名掲示板をチェックすることと、小学校教員をする恋人と結婚すること。しかし、その恋人は、子供を強く欲しがっていた。自分は子供など大嫌いだというのに……
とにかく、終始、負の感情が錯綜。自分の家の悩みを千夏子のブログへ投稿する結子。子供が出来ない。セックスレス。そんな悩みを書き込む結子に対し、千夏子は優越感を抱き、真摯に相談を受ける振りをしながらいかに相手を傷つけるか、ということに夢中になっていく。一方の春花は、ある時、ひょんなことで自分の保育園へ子供を預けている千夏子がブログをやっていることを発見。その嘘を指摘し、ブログを炎上させるようになっていく。そんな中、千夏子と知り合って、千夏子のブログで身代わりにされてしまう柚希。
勿論、物語なのだから、誇張とかあるし、そもそも、そこまで狭い範囲内で物語が錯綜するかよ、と言っちゃえばそれまで。しかし、多かれ少なかれ、この手の話って転がっているものだろうし、その中での憂さ晴らし、悪意、そういうちょっとしたものが醸造されていく過程というのは理解できる。嫌な話だけど、自分自身、そういう部分がないかととわれれば、「ない」と断言はできないと思う。この辺りは非常に読み応えのあるものになっている。
ただ……それだけに、終盤、あまりに綺麗にまとまってしまうのは拍子抜け、とも思う。例えば、炎上のきっかけを作ったのは春花。でも、一度、拡散されたものは、すでに彼女の手を離れているわけで、そういう部分はどうしたのだろう? また、その過程での人間関係にしてもそうで、千夏子夫婦とか、夫婦関係の中にどうしようもない亀裂が出来ているはずで、それがアッサリ修復されるものだろうか? とか思ってしまう。それまでの悪意の醸造がリアルだった分、まとめが綺麗すぎる感じがする。
と、まとめ部分が綺麗すぎるように感じたところには違和感を感じたのだけど、そこに至るまでの空気感は非常に読ませる内容になっていると思う。

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