(書評)ときどき旅に出るカフェ

著者:近藤史恵



照明メーカーに勤める瑛子が自宅の近くで見つけたカフェ・ルーズという喫茶店。そこを切り盛りするのは、かつての同僚である円。円が旅先で出会った料理を提供するそこが気に入った瑛子は、足しげく通うことに。会社、日常……瑛子の周囲で起きる不思議な出来事は、円の提供する料理と共に解決されていって……
という連作短編集。全10話を収録。
著者の描く料理店を題材にした作品というと、「パ・マル」を舞台としたシリーズがあるのだけど、そちらは店員の視点で、あくまでも店の中で事件が発生する形になっている。対して、本作の場合は客である瑛子の視点であり、謎も瑛子の会社だったり、その周囲だったり、というところから出発する。
今作のテーマは「常識の違い」ってところなのかな? と思う。
作中に出てくる料理は、先に書いたように円が旅先で出会った料理。そして、その旅先では、日本の常識では思いつかないような組み合わせだったり、料理法だったり……。例えば、比較的、日本人にもなじみ深いコーヒー。エスプレッソコーヒーっていうのは、基本的にはそこに甘さを入れて飲むようなもの。でも、日本人はなぜかそのまま飲んでしまって「苦っ!」ってなってしまう。それは、日本人がお茶とかをそのまま飲む、という文化で育っているからじゃないか? 海外では、緑茶などでも砂糖などを入れて飲むことは珍しくないけど、日本ではそれをほとんどしないから……などなど。そして、それを聞いた瑛子が、確かに同じお茶でも紅茶には砂糖などを入れるのは珍しくない、というのを思い出すシーンがあるのだけど、その瑛子の考えに自分もそうそう、と思ったりした。
(ついでに言うと、自分が子供のころ、近所の友達の家に行き麦茶をごちそうになったら、それに砂糖が入っていて「まずっ!」と思ったことがあったなぁ、なんていうのを思い出したりもした。慣れの問題って、やっぱり大きいよな……)
というような感じでエピソードがつづられていくのだけど、終盤、そのカフェ・ルーズの近くに、同じようなコンセプトの店が出店する。しかも、そのオーナーというのは、円とも因縁があって……。この話については、著者らしい、苦さというか、そういうものを含んでいるな、と感じる。家族だから、親族だから、と言って常に仲が良いわけではない。家族というのは、ある意味、最も小さな社会単位。その中には、他には予想がつかないような「常識」が潜んでおり、それが場合によっては関係をズタボロにすることもある。
そして、最後に描かれる円の想い人。
こう見ると、やっぱり「常識」というのがテーマなんじゃないか、と思えた。

No.4457

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