(書評)罪の声

著者:塩田武士



新聞社の年末企画して、31年前に起きた「ギンガ萬堂事件」についての取材をすることとなった新聞記者の阿久津。悪戦苦闘をしながらも、やがて、事件に近づいていく。一方、京都でテーラーを営む曽根は、父の遺品の中から一冊の手帖と一本のカセットテープを発見する。手帳に書かれていたのは、英文とギンガ、萬堂の文字。そして、テープには幼い頃の自分の声。そして、その内容は、31年前の事件の脅迫に使われたものと一緒……
第7回山田風太郎賞受賞作。
この作品、巻末の参考文献一覧にあるのはずらりと並んだ「グリコ森永事件」関連の書籍。そして、様々な評価などを読むと、本作の事件の概要は実際のソレをほぼ忠実にトレースしているらしい(このような書き方になるのは、流石にこの事件について私の記憶が殆どないため。当時、小さな子供だった私の記憶は、スーパーでスナック菓子が欲しいとねだったら、叔母に「ダメ!」と叱られて憮然としたことのみ)
あくまでも私個人の考えなのだが、実際の事件をトレースした作品っていうのは、その事件についての知識の有無。そして、どこまで想像の余地を入れることが出来るのか? というバランス感覚。その部分が肝じゃないかと思っている。例えば、自分が比較的読んでいる作家でいうと折原一氏などは、現実の事件を下敷きにするのだが、世間を騒がせた大事件というよりも、三面記事の片隅に載るようなマイナーな、しかし、ヘンテコな事件を題材にし、なおかつ、物語の視点に犯人などの関係者をリアルタイムで事件を感じられるような構成を取っている。一方、本作は、新聞記者と、身内に関係者が? という疑念を抱いてしまった男という形で描かれていく。
正直なところ、前半くらいまではじれったい。主だった部分を担当する阿久津は、ただただ、取材をしては失敗を繰り返し、その合間に、事件の概要が説明される流れ。主人公の阿久津自身が、リアルタイムで事件を知っているわけではないため、事件についての説明が多く、しかも、バラバラに出てくるので、正直なところ冗長に感じられた。多分、事件の概要を知っている人は入りやすいのだろうけど。まして、どこまでが知られていることで、どこからがフィクションなのか、というのが分かりづらい状況だと。
ということで、ちょっと辛い評価になってしまったのだけど、ただ、それでも、曽根の苦悩は読む応えがある。
自分がもしかしたら、歴史的な事件の加害者の関係者かも知れない。そういえば、あの頃、仲良くしていたあの人は……。後半は、その辺りについて、阿久津が調べる、という中で苦悩が積み重なっていく。物語が進めば進むほど引き込まれたのは事実。
この辺り、知識の有無とかそういうのが評価の分かれ目になる気がする。そこはマイナスとして、でも、最終的には引き込まれる作品。
そんな評価になるかな?

No.4460

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