fc2ブログ

(書評)首洗い滝 よろず建物因縁帳

著者:内藤了



地図にない山奥の瀑布でクライマーが滑落死した。そこは、地元の人から「近づく者に死をもたらす滝」、「首洗い滝」と呼ばれ、恐れられる場所。山道整備のため、現場に居合わせた広告代理店勤務の高沢春菜は、生存者から、事故の瞬間、滝から女の顔が浮かび、泣き声のような子守歌が聞こえた、という証言気を聴き……
シリーズ第2作。
タイトルに「よろず建物」とあるけど、2作目にして「滝」とはこれいかに?(笑)
前作は、何か悪い物が憑いている、という蔵の存在について、調べても調べても、調べ切った、という感慨にたどり着けない深遠さ、というのが一つの売りであり、その上での悪霊などの存在についての切なさへ、と昇華する物語であった。それに対し、本作は比較的、滝のいわくなどについてはアッサリと判明する。そして、その分、滝で起こる事件のおどろおどろしさ、そして、その背景の悲痛さ、というものを強調しているように思う。
何しろ、滝で起きる事件。滝に近づくと死んでしまう。それだけならばともかく、そこで死んだ者は顔をはぎ取られてしまう。さらに、村で行方不明者などが出た場合にもなぜか、その人物は滝で発見される……。
これだけでも、想像するとおどろおどろしいのだけど、子守歌、さらに、何かを呼ぶような声……。お約束と言えば、お約束なのだけど、なかなか怖い。そして、その背景にあるもの……。現在でも、女性にとってその行為は命がけ。まして、当時は……。それを考えると……
そんな怪異の一方で、前作からあった現実でのセコセコとした出来事。前作の場合は、金銭的なところとかが中心で、今回も長坂が出て……で健在。その上で……
個人的に、滝を祭っている神社の宮司の息子・清水の葛藤が印象的。神社の息子として生まれたものの、都会の大学に進み、そのままそこで就職。宮司を継ぐことなく、父の死後も放置したまま。確かに村で、宮司は慕われている。しかし、そもそもの過疎化があり、さらに、死体が上がる場所での汚れ仕事。そんなことはしたくないし、まして子供たちに、なんて……
ミステリ要素はあまりなくなったものの、パワーアップしたホラー要素。それと、田舎で暮らす人の、現実的な葛藤。そういうのがうまくマッチしている。

No.4466

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

スポンサーサイト



COMMENT 0