(書評)槐

著者:月村了衛



水楢中学校野外活動部、夏の恒例行事である湖畔のキャンプ場での合宿。野外活動部の面々が止まるその夜に惨劇は起きた。キャンプ場に隠された大金を探す半グレ集団・関帝連合がキャンプ場を封鎖、客を虐殺し始めたのだ。囚われの身となった生徒たち。だが、そんな状況下、何者かが半グレ集団に反撃を開始して……
著者の作品では、しばしばある、ただひたすらにアクションシーンが続く作品、といった趣だろうか。ただ『機忍兵 零牙』や『一刀流無想剣 斬』といった作品はどちらかというと、街道を逃亡しながら追っ手と……という感じだったのに対し、本作は閉鎖空間となったキャンプ場からの脱出戦といったところが違いと言えよう。
一応、ネタバレ的なところを最初にいってしまうと、タイトルの槐とは、国際的なテロリストである女性。そして、正体を隠して、水楢中学野外活動部の副顧問として引率にやってきた不愛想な教師・由良。そして、半グレ集団に反撃を開始した存在こそが彼女。そこから反撃、そして、脱出をする中で、野外活動部の面々の過去などが掘り下げられる、という構成になっている。
真面目にかんがえれば色々とツッコミどころはある。そもそも、キャンプ場を閉鎖して、客を虐殺してって、効率が悪すぎない? さらに、どっからそれだけの凶器を集めたんだ? とか、そういうのを考えるとね。ただ、それが気にならないくらいの勢い、キャラクター性が光った作品だと思う。
数か月前、振り込め詐欺の被害者となったことで祖母を自殺させてしまった公一。以来、彼の家庭はギクシャクとしたまま。そんな詐欺の中心こそ、関帝連合であり、今回の事件の中心人物・溝渕。危機的状況ながらも、しかし、彼への復讐のチャンスともとらえる。顧問の代わりに合宿に参加した教頭・脇田。事なかれ主義、小うるさい存在。そんな彼がなぜ、そうなってしまったのか? そして、危機的状況の中で見せた信念。さらには、そもそも、生徒たちを助ける必要のない槐が、生徒たちを救う理由……
元々、著者はアニメの脚本などをしていた人。こういう言い方をすると何だけど、アニメにおいて、各キャラクターのお当番回なんていうのが存在する。そういうお約束を上手く小説の盛り上げに転嫁したな、という風に感じる。
ツッコミどころはある。でも、スピーディな展開と、ツボを押さえたキャラクターの熱い想いにしっかりと引き込まれた。

No.4468

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村

http://ylupin.blog57.fc2.com/blog-entry-9465.html
スポンサーサイト

COMMENT 0

TRACKBACK 1

この記事へのトラックバック
  •  槐/月村 了衛
  • 月村了衛さんの「槐」を読み終えました。 水楢中学の野外活動部は、毎年葦乃湖で合宿することになっています。部長の公一、公一に思いを寄せる生徒会副会長もつとめる早紀、公一の親友の進太郎は受験を控えた3年生、イジメにあって引きこもっていた景子、その幼なじみで薙刀部も兼任している茜が2年生。そしてアウトドア好きで明るく元気な裕太が1年生。 今回はそれに加えて、暴走族に加わったりして問題行...
  • 2017.08.16 (Wed) 18:21 | 日々の記録