著者:川瀬七緒


認知症のお年寄りの「消えない記憶」について調べるため、認知症グループホーム「風の里」を訪れた羽野千夏。そこは、他の施設から厄介払いされてきた入所者を集めた曰く付きグループホーム。常にトラブルを引き起こす入所者たち。機械的に業務をこなす職員。そのような中、千夏は脱走の常連である入所者・ルリ子の発した「おろんくち」という言葉に興味をひかれ……
というような粗筋であっていると思うのだけど、一応、書かなかったことで言うと、この物語の主人公は二人おり、片方は上に書いた千夏。もう一人が、母親に振り回された結果、不登校になってしまった少年・大地。彼は、先に書いた「おろんくち」について、千夏がQ&Aサイトに投稿した書き込みを見て、連絡をすることになる。
こういうと何だけど、序盤は、色々なテーマをちりばめて、どこがメインなのかわからないところがあったりする。
千夏が研究のために尋ねたグループホーム。そこにいるのは、認知症が進み、様々な問題を抱えた老人たちと、それを機械的に扱う職員たち。例えば、ちょっとした気分転換のために、寄り道をするだけで叱責されるし、会話による療法にしてもせっかく盛り上がってもテーマから外れたらダメという狭苦しいもの。勿論、読者としては千夏視点で見るので嫌な気分になるわけだけど、わずかな職員で、事故などを起こさないで、という縛りがある中では仕方がないのではないか、というのも感じられる。
一方の大地。教育熱心と言えば聞こえが良いが、ただ、自分が良いと思ったものを押し付ける母親の下、自分が何をしたいのか? 自分は何もできないではないか。そんな絶望に押しつぶされそうになり、不登校になってしまった。その絶望感。この辺りもテーマの1つかな? ただ、どこへ話が向かうのかよくわからないまま話が進んでいく。
というふうに思っているところから、だんだんと、本来の千夏の目的であった記憶へ。ルリ子のいう「おろんくち」。ルリ子が脱走して向かっている場所には何か法則性があるらしい。ルリ子の人生を探り、現地にもいき……という辺りから一気にエンタメ性が増加。さらに、この辺りになってくると、グループホームの老人たちの人間性も見えてきてやり取りも楽しくなってきて……その結末は……
社会問題がテーマなのかな? と思ったらそうではなく、著者のデビュー作などにもある民俗学的な内容かな? と思ったらそこからも外れていく。何が主題だったのか? というと「?」という部分はある。でも、著者らしきリーダビリティの高い物語と、逆にどこへと転がるのかわからない物語を楽しむことが出来た、というのも確かなこと。
No.4472

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認知症のお年寄りの「消えない記憶」について調べるため、認知症グループホーム「風の里」を訪れた羽野千夏。そこは、他の施設から厄介払いされてきた入所者を集めた曰く付きグループホーム。常にトラブルを引き起こす入所者たち。機械的に業務をこなす職員。そのような中、千夏は脱走の常連である入所者・ルリ子の発した「おろんくち」という言葉に興味をひかれ……
というような粗筋であっていると思うのだけど、一応、書かなかったことで言うと、この物語の主人公は二人おり、片方は上に書いた千夏。もう一人が、母親に振り回された結果、不登校になってしまった少年・大地。彼は、先に書いた「おろんくち」について、千夏がQ&Aサイトに投稿した書き込みを見て、連絡をすることになる。
こういうと何だけど、序盤は、色々なテーマをちりばめて、どこがメインなのかわからないところがあったりする。
千夏が研究のために尋ねたグループホーム。そこにいるのは、認知症が進み、様々な問題を抱えた老人たちと、それを機械的に扱う職員たち。例えば、ちょっとした気分転換のために、寄り道をするだけで叱責されるし、会話による療法にしてもせっかく盛り上がってもテーマから外れたらダメという狭苦しいもの。勿論、読者としては千夏視点で見るので嫌な気分になるわけだけど、わずかな職員で、事故などを起こさないで、という縛りがある中では仕方がないのではないか、というのも感じられる。
一方の大地。教育熱心と言えば聞こえが良いが、ただ、自分が良いと思ったものを押し付ける母親の下、自分が何をしたいのか? 自分は何もできないではないか。そんな絶望に押しつぶされそうになり、不登校になってしまった。その絶望感。この辺りもテーマの1つかな? ただ、どこへ話が向かうのかよくわからないまま話が進んでいく。
というふうに思っているところから、だんだんと、本来の千夏の目的であった記憶へ。ルリ子のいう「おろんくち」。ルリ子が脱走して向かっている場所には何か法則性があるらしい。ルリ子の人生を探り、現地にもいき……という辺りから一気にエンタメ性が増加。さらに、この辺りになってくると、グループホームの老人たちの人間性も見えてきてやり取りも楽しくなってきて……その結末は……
社会問題がテーマなのかな? と思ったらそうではなく、著者のデビュー作などにもある民俗学的な内容かな? と思ったらそこからも外れていく。何が主題だったのか? というと「?」という部分はある。でも、著者らしきリーダビリティの高い物語と、逆にどこへと転がるのかわからない物語を楽しむことが出来た、というのも確かなこと。
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