著者:支倉凍砂


賢狼ホロと、宿屋の主人となったロレンスのその後の日々を描く作品集第2作。全4編を収録。
ある意味で、『狼と羊皮紙』シリーズの前日譚的な話と言える『狼と甘い牙』。二人の関係は、それこそ『狼と羊皮紙』シリーズで十分に描かれているのだけど、前提として、コルが大好きなミューリと、ミューリをたしなめる立場でありながらもしかし、「妹」という以上の感情を抱いているコル。その関係の始まり、というわけではないけど、でも、始まりであってもおかしくないエピソード。
気ままに遊んではトラブルを起こすミューリ。そのミューリの反省のための作業……なのに、当の本人はどこかへ。思わず、大声で叱ってしまったコルだったが、ミューリにもちゃんと言い分はあって……。ロレンスとの会話とかでは、結構、子供っぽいところを見せることもあるホロだけど、コルとミューリ、二人の感情までしっかりと見切っての窘め。そして、コル自身の自分の気持ちへの気付き。原点である。でも、ホロという存在がなければ、という意味でこちらに収録となったのかな? と思わされる。
さて、そんなエピソード。本編のシリーズでも散々出ていたホロとロレンスの「時間の違い」。そのことを心配しつつ、しかし、旅を続ける中で、結婚をした二人。しかし、結婚してからの時間が経過するにつれ、どうしてもその「時間の違い」も見え隠れ。そんなとき、ロレンスは何かをしていて……という『狼と香辛料の記憶』。
こういうと何だけど、ホロとロレンスの旅の物語って、「時間の違い」という壁については気にしない、もっと言うなら、そんなもの関係ない、という感じで結婚をしたわけだけど、年を取れば取るほど……。この物語はホロ視点で綴られるのだけど、ホロ視点だからこそそれを感じる。そして、その際、取り残されるのは自分……。まして、娘であるミューリが駆け落ち同然で家を飛び出しより、それを感じ始めたとき……
ロレンスは、その試みについて、永遠にするため、というけど、むしろ、これはそれを目にすることとかよりも、それを残すことによってホロの中に、自分の存在を永遠に刻み付けよう、っていう試みなんじゃないかな? と思う。それもまた、ある意味では残酷と捉えることも可能なのかもしれないけど……でも、「幸せな記憶が生きる糧になる」ってこともあるわけだし……きっと、そうなるのだろうな。
No.4476

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ある意味で、『狼と羊皮紙』シリーズの前日譚的な話と言える『狼と甘い牙』。二人の関係は、それこそ『狼と羊皮紙』シリーズで十分に描かれているのだけど、前提として、コルが大好きなミューリと、ミューリをたしなめる立場でありながらもしかし、「妹」という以上の感情を抱いているコル。その関係の始まり、というわけではないけど、でも、始まりであってもおかしくないエピソード。
気ままに遊んではトラブルを起こすミューリ。そのミューリの反省のための作業……なのに、当の本人はどこかへ。思わず、大声で叱ってしまったコルだったが、ミューリにもちゃんと言い分はあって……。ロレンスとの会話とかでは、結構、子供っぽいところを見せることもあるホロだけど、コルとミューリ、二人の感情までしっかりと見切っての窘め。そして、コル自身の自分の気持ちへの気付き。原点である。でも、ホロという存在がなければ、という意味でこちらに収録となったのかな? と思わされる。
さて、そんなエピソード。本編のシリーズでも散々出ていたホロとロレンスの「時間の違い」。そのことを心配しつつ、しかし、旅を続ける中で、結婚をした二人。しかし、結婚してからの時間が経過するにつれ、どうしてもその「時間の違い」も見え隠れ。そんなとき、ロレンスは何かをしていて……という『狼と香辛料の記憶』。
こういうと何だけど、ホロとロレンスの旅の物語って、「時間の違い」という壁については気にしない、もっと言うなら、そんなもの関係ない、という感じで結婚をしたわけだけど、年を取れば取るほど……。この物語はホロ視点で綴られるのだけど、ホロ視点だからこそそれを感じる。そして、その際、取り残されるのは自分……。まして、娘であるミューリが駆け落ち同然で家を飛び出しより、それを感じ始めたとき……
ロレンスは、その試みについて、永遠にするため、というけど、むしろ、これはそれを目にすることとかよりも、それを残すことによってホロの中に、自分の存在を永遠に刻み付けよう、っていう試みなんじゃないかな? と思う。それもまた、ある意味では残酷と捉えることも可能なのかもしれないけど……でも、「幸せな記憶が生きる糧になる」ってこともあるわけだし……きっと、そうなるのだろうな。
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