著者:澤村伊智


夫の転勤に伴い、仕事を辞め、東京で専業主婦となった果歩。東京での新生活に慣れない中、彼女は幼馴染の平岩敏明と再会する。敏明の家に招かれ、彼の妻、そして、祖母との交流が始まるのだが、その家にはおかしなことがあった。それは、屋内にあふれる砂。しかし、当の敏明は……
最初に言うと、この作品、短編集だと思っていた。上に書いたのは、第1章の内容と言える。
基本的には幸せな平岩夫妻。しかし、そこには何か奇妙な影。そして、彼らが気づかない砂。それは一体、何なのか? 調べてみれば、夫婦関係に影を残す事件が起きていて……。そんなこんなで、その事件の影が判明し、それが解決したと思ったら……ある意味、ブラックジョークみたいなオチで短編としても優れた話だと思う。
そして、第2章では、それほど明快なオチとかはない。でも、子供時代、皆で行った廃屋探検。しかし、そこで彼らを待っていたのは……。砂、家、そういうものは共通しているけど、視点も異なり、雰囲気も異なる。そんな物語もこれはこれでアリだろう。
という感じだったのが、3章以降から話がだんだんと繋がっていく。どんどんと増えていく平岩家の砂。その中で明らかになる異様さ。一方、少年時代、その家での事件でトラウマを追ってしまった青年がそこで、生活している家族を見つけて……
これまでの著者の作品と言うと、男女参画とか、ネットレビューとか、時事ネタを取り入れていたのだけど、本作ではそういう要素はほとんどない。ただ、その代わりに、掃除とかをしても部屋の中にちょっと残ってしまったりする「砂」というものを上手く取り入れている。あったとしても、別におかしくはない。確かに、気にならない人は気にならない。でも、それが度を越しているとしか思えてないのに、その家では誰も気にしない。だからこその「気持ち悪さ」。それを上手く物語へと引き込むための材料として機能させている。どっちが、というのは言えないものの、時事的な題材ではないがゆえに、色褪せないっていうの面があると思う。
終盤の対決シーンとかは、ちょっとお約束のように思えてしまったのだけど、これまでとは違ったカラーの作品を出してきて、作品の幅も広がったんじゃないだろうか、という風に思えてならない。
No.4477

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夫の転勤に伴い、仕事を辞め、東京で専業主婦となった果歩。東京での新生活に慣れない中、彼女は幼馴染の平岩敏明と再会する。敏明の家に招かれ、彼の妻、そして、祖母との交流が始まるのだが、その家にはおかしなことがあった。それは、屋内にあふれる砂。しかし、当の敏明は……
最初に言うと、この作品、短編集だと思っていた。上に書いたのは、第1章の内容と言える。
基本的には幸せな平岩夫妻。しかし、そこには何か奇妙な影。そして、彼らが気づかない砂。それは一体、何なのか? 調べてみれば、夫婦関係に影を残す事件が起きていて……。そんなこんなで、その事件の影が判明し、それが解決したと思ったら……ある意味、ブラックジョークみたいなオチで短編としても優れた話だと思う。
そして、第2章では、それほど明快なオチとかはない。でも、子供時代、皆で行った廃屋探検。しかし、そこで彼らを待っていたのは……。砂、家、そういうものは共通しているけど、視点も異なり、雰囲気も異なる。そんな物語もこれはこれでアリだろう。
という感じだったのが、3章以降から話がだんだんと繋がっていく。どんどんと増えていく平岩家の砂。その中で明らかになる異様さ。一方、少年時代、その家での事件でトラウマを追ってしまった青年がそこで、生活している家族を見つけて……
これまでの著者の作品と言うと、男女参画とか、ネットレビューとか、時事ネタを取り入れていたのだけど、本作ではそういう要素はほとんどない。ただ、その代わりに、掃除とかをしても部屋の中にちょっと残ってしまったりする「砂」というものを上手く取り入れている。あったとしても、別におかしくはない。確かに、気にならない人は気にならない。でも、それが度を越しているとしか思えてないのに、その家では誰も気にしない。だからこその「気持ち悪さ」。それを上手く物語へと引き込むための材料として機能させている。どっちが、というのは言えないものの、時事的な題材ではないがゆえに、色褪せないっていうの面があると思う。
終盤の対決シーンとかは、ちょっとお約束のように思えてしまったのだけど、これまでとは違ったカラーの作品を出してきて、作品の幅も広がったんじゃないだろうか、という風に思えてならない。
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