(書評)二礼茜の特命 仕掛ける

著者:城山真一



内閣金融局の秘密部署S2。そこに所属する二礼茜の任務。それは、依頼人の「大切なもの」と引き換えに、経営危機に陥った企業の資金作りをすること。水産会社の立て直しのしていた茜は、株式取引の最中、バイオベンチャー・エヌメディックの株価が奇妙な動きをしているのを発見する。やがて、そのエヌメディックの立て直しをすることとなるのだが……
『ブラック・ヴィーナス』の続編にあたる作品。まぁ、一部の設定を除いては、本書から読んでも問題ないと思うが。
結論から言うと、前作よりも格段に面白くなった。
物語は終章を含めて、全5章構成。第1章では、前作の前半のエピソードのように、経営の傾いた水産加工会社の運転資金をねん出するエピソード。そこで、この作品の世界観をおさらいし、茜がどういう仕事をしているのか、というのが示される。物語の導入編として十分な出来だろう。そして、その中でも出てきたバイオベンチャーの立て直しをすることに……
見るからにお人よしの社長が経営するエヌメディック。その株価の変動は、明らかにインサイダーの疑いがある。茜が出した条件は、インサイダーをした存在を発見せよ、というもの。隙のありそうな容貌とは裏腹に、情報のセキュリティには人一倍、気を使っている社長。株式変動に関する情報を入手できたのはわずかな関係者のみ。そして、その奇妙な変動から考えられるのは……
そして、そのインサイダーの条件を満たしたのちは、運転式を得るための攻防戦。研究の失敗、そして、インサイダー。悪条件が重なる中で引き上げていくスポンサー、そして、銀行。明らかなマイナスの中で、新たな投資者の捜索。しかし、その中では、すでに会社に見切りをつけた、としか思えない者も……。さらに明らかにどこかが妨害工作をしている様子さえ見えてくる……
前作の場合、ただ、茜が天才的な投資家であった、というだけで解決してしまっていた部分があったのだけど、会社の資産などを巡っての攻防戦などがテンポよく、しかし、専門用語などもそれほどわかりやすい形でしめされて展開していくため、私のような経済音痴の人間も全く苦になることなく読み進め、その攻防の面白さを堪能することができた。何よりも、終盤、関係者たちが一致団結して会社を守り抜く、というあたりは非常に熱量豊富。
まぁ、必ず上手くいく茜の投資、とか、茜の知り合いに偶然、世界的な投資家がいて……とか、ファンタジックなところはあるのだけど、変に唐突だった前作よりも物語としての完成度は格段に上がっていると思う。面白かった。

No.4491

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村


スポンサーサイト

COMMENT 0