(書評)やはり雨は嘘をつかない こうもり先輩と雨女

著者:皆藤黒助



私の誕生日前日、祖父が危篤になった。肌身離さずに持っていたのは、私が生まれた日の写真。「五色の雨が降る朝に生れた」という理由でつけられた私の名前、「五雨」の意味とは……? 怖い印象しかなかった祖父の真意について、雨の日にしか登校しない雨月先輩に相談を持ち掛けると……
などから始まった連作短編形式の物語。
その名前が災いしたのか、大事な時にははいつも雨に降られてしまう雨女の五雨と、謎の先輩・雨月が謎を解いていく形。
とにかく、雨にまつわる蘊蓄が沢山。文学の中に出てくる雨から、自然現象としての雨。謎を解いていく中で、次々に飛び出してくるその手の蘊蓄がまず印象的。考えてみると、何かイベントをするには雨が降っていると厄介だし、また、仕事とかでも雨が降る、というだけでいろいろと業務に支障が出たりすることは多いわけだけど、雨って季節感とか、そういうのを表す言葉が沢山。季節の情緒とか、そういう意味では雨の方が晴れよりも多いような気がする。晴れだと、五月晴れとか程度で、あまり季節感を示すような言葉が思い浮かばないし……
冒頭に書いたエピソードは1編目の話なのだけど、自分が雨女だ、という言葉からあまり良い印象を持っていない五雨。しかし、祖父は自分が生まれたときに何をしていたのか? どうして「五雨」などという名前にしたのか、が判明した時、不器用で、孫に対しても優しく接することができない祖父の優しさみたいなものがじっくりと感じられたのは良かった。
そして、そんなやりとりを通して、五雨の過去、雨月先輩の正体について判明する3編目……
そもそも、雨の日にしか登校しないのに進級できるのか? あるトラブルについての調査の中、先生が言ったのは「そんな生徒は存在しない」という言葉。しかし、自分はここの生徒という雨月先輩。そこに五雨自身の過去が連なってきて……
ある意味、ものすごくハードな過去を持っている、という風にも言える二人。五雨自身が自戒するように、それが本当なら、五雨のことを憎んでいてもおかしくない。しかし、雨月先輩は……
過去を変えることはできない。けれども、その過去に向き合って前をしっかりと見据えている雨月先輩。そして、謎と向き合うことで、自分も前を見据えるようになった五雨。そんな結末が温かく、非常に読後感が良かった。それこそ、タイトルにもある「雨」じゃないけど、しっとりとした趣のある小説じゃないかと思う。

No.4492

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