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(書評)奈落の偶像 警視庁捜査一課十一係

著者:麻見和史



銀座のブティックのショーウィンドーに男の遺体が吊るされた、という事件が発生。遺体には黒いアルミホイルと蓄光データが残されていた。如月塔子ら十一係は捜査を開始するが犯人の様子は見えてこない。そんな中、同じ銀座に「何者かに拉致された」というメッセージが残されたICレコーダーが発見されて……
シリーズ第9作。
今回は文字通り、「土地ならでは」ということかな? 銀座のショーウィンドーで発見された遺体から始まって、拉致被害を訴えるメッセージ。数多くの人々が行きかい、目撃者も多くなるだろう場所。死体を遺棄するにしても、メッセージを残するにしてもリスクが高すぎるだろうことをなぜするのか? さらに、最初の被害者、舞台演出家の黒田と、拉致被害者たちのリンクは一体どこにあるのか? そして、拉致被害者はどこに? 犯人の切ってきた期日はなぜか?
犯人、被害者のミッシングリンクに関していえば、終盤になるまでわからないのだけど、銀座という土地にこだわった理由。それぞれの場所の意味に関しては、地図が用意されていることなどもあり、具体的な場所のイメージとともに考えることができた。もしかしたら、地図を見ながら「もしかしたら」と勘づくかもしれないけど、それはそれで良いんじゃないだろうか。
そして、このシリーズの見どころの一つである塔子の成長だけど、終盤、真犯人との対峙に集約されると思う。
動機などについて同情すべき点もある犯人。しかし、そのために犯人が大事にしなければならない存在を巻き込み、さらに本当に凶悪な犯罪をしてしまった。そんな相手に対する痛烈な一言。塔子自身、その後、「実は同情している部分もある」と語ったように、完全に本心とは言えない。でも、微塵もそれを感じさせずに犯人と対峙した、っていうのは刑事としての図太さとか、そういう意味も含めて成長していると言えるのではないかと思う。
シリーズの中でも地味な話のようにも思うが、これはこれで完成された物語だと思う。

No.4498

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