著者:西尾維新


人類最強の請負人・哀川潤。彼女に舞い込んだ依頼は、海底火山の噴火ででき、各国、勢力の思惑が交錯する島に行き、その勢力の牽制をすること。生物の息吹を感じさせない島で、唯一見かけた植物に心許す潤だったが、翌朝、その植物が彼女の敵となって襲い掛かり……(『人類最強のときめき』)
など、全5編の短編集ということでいいのかな? 他に『人類最強のよろめき』『人類最強の失敗』は3エピソードという形。
正直、第1作の段階では、かなり読みづらいと感じたのだが、潤の独白の形でつづられる物語に慣れたのか、それとも文体自体か読みやすくなったのかはわからないが、大分、読みやすくなったように感じる。
で、まず表題作についていうと、この作品の中ではちょっと異質な感じがする。勿論、異常な速度で育ち、進化する植物、というのは異常な状況ではある。でも、これまでの異形の存在とか、そういうものと対峙してきた潤が、現代の世界にも沢山存在する植物に翻弄され、そして、苦戦する。そして……。人類最強と言っても、自然には勝てない。そんな物語が印象的。
そして、それからの4編は、そことの対峙、というか、そういうものを感じる。
例えば、『よろめき』は、読むと文字通り、寝食を忘れて読みふけってしまう物語を作る装置を作った科学者との対峙。結構、「物語」シリーズとかでも、電子書籍とか、表現規制を巡る話題とかを取り入れてくる著者なのだけど、この話では、そんなやりとりが沢山。そして、読むと止まらなくなって死んでしまう、という物語はつまり……元も子もないオチだけど、物語って何のためにあるんだ、としたら、これじゃ「未完成」だよね、というのには笑った。
同じようなのが『失敗』の一つであるデジタル探偵との対決。すなわち、スーパーコンピュータを用いて、様々な情報から犯人を特定する探偵と対峙する犯人役として雇われた潤。24時間以内に事件を起こし、48時間以内に特定されなければ負け、というルールの中で潤がとった作戦は……
これはある意味、コンピュータとか、そういうものの弱点などを端的に表したエピソードなのかな、と。確かに演算能力、情報分析などにおいてコンピュータに人間は勝てない。しかし、コンピュータを使うのは人間。データがなければ使えない。それならば……という作戦はその通り。そして、その上でのさらなるオチ。……自分がデジタル教科書などに反対の理由は、まさしくこれだよな、と大笑いした。
最初に書いたように、読みやすかった、というのは確か。そして、こうやって書いてみると、これまでの2作と比べると突飛な設定とかが少なくすんなりと受け入れやすい、っていうのもあるんじゃないかな? というのをふと思った次第。
No.4502

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人類最強の請負人・哀川潤。彼女に舞い込んだ依頼は、海底火山の噴火ででき、各国、勢力の思惑が交錯する島に行き、その勢力の牽制をすること。生物の息吹を感じさせない島で、唯一見かけた植物に心許す潤だったが、翌朝、その植物が彼女の敵となって襲い掛かり……(『人類最強のときめき』)
など、全5編の短編集ということでいいのかな? 他に『人類最強のよろめき』『人類最強の失敗』は3エピソードという形。
正直、第1作の段階では、かなり読みづらいと感じたのだが、潤の独白の形でつづられる物語に慣れたのか、それとも文体自体か読みやすくなったのかはわからないが、大分、読みやすくなったように感じる。
で、まず表題作についていうと、この作品の中ではちょっと異質な感じがする。勿論、異常な速度で育ち、進化する植物、というのは異常な状況ではある。でも、これまでの異形の存在とか、そういうものと対峙してきた潤が、現代の世界にも沢山存在する植物に翻弄され、そして、苦戦する。そして……。人類最強と言っても、自然には勝てない。そんな物語が印象的。
そして、それからの4編は、そことの対峙、というか、そういうものを感じる。
例えば、『よろめき』は、読むと文字通り、寝食を忘れて読みふけってしまう物語を作る装置を作った科学者との対峙。結構、「物語」シリーズとかでも、電子書籍とか、表現規制を巡る話題とかを取り入れてくる著者なのだけど、この話では、そんなやりとりが沢山。そして、読むと止まらなくなって死んでしまう、という物語はつまり……元も子もないオチだけど、物語って何のためにあるんだ、としたら、これじゃ「未完成」だよね、というのには笑った。
同じようなのが『失敗』の一つであるデジタル探偵との対決。すなわち、スーパーコンピュータを用いて、様々な情報から犯人を特定する探偵と対峙する犯人役として雇われた潤。24時間以内に事件を起こし、48時間以内に特定されなければ負け、というルールの中で潤がとった作戦は……
これはある意味、コンピュータとか、そういうものの弱点などを端的に表したエピソードなのかな、と。確かに演算能力、情報分析などにおいてコンピュータに人間は勝てない。しかし、コンピュータを使うのは人間。データがなければ使えない。それならば……という作戦はその通り。そして、その上でのさらなるオチ。……自分がデジタル教科書などに反対の理由は、まさしくこれだよな、と大笑いした。
最初に書いたように、読みやすかった、というのは確か。そして、こうやって書いてみると、これまでの2作と比べると突飛な設定とかが少なくすんなりと受け入れやすい、っていうのもあるんじゃないかな? というのをふと思った次第。
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