(書評)素敵な日本人

著者:東野圭吾



9編の作品を収録した短編集。
一応、年中行事を題材にした話が多め、って感じなのかな? 話同士の関連性とか、そういうものは全く存在しない独立した話になっている。
『正月の決意』。正月のもろもろの行事をこなし、初詣に出かけた達之夫婦は、神社で下着姿で倒れている町長を発見する。警察にて事情聴取を受ける。
なんていうか、話の雰囲気からすると、やる気のない警察だったりとかで、著者の作品だと『雪煙チェイス』とかのそれに近い。もっと言うと、ドラマ『踊る大走査線』の署長とかのやりとりに近いかな? という感じ。当然、達之もイライラしっぱなし。そして、その真相も……。ただ、そんなグダグダなやりとりが、達之たちの抱えていたものをすっきりさせる、というのは上手さが光る。
娘が結婚をすることになった。ずっと憧れていた仕事をやめ、遠い地で、代々、病院を経営する一家に入る、という娘に不安を覚える父、という『今夜は一人で雛祭り』。思い浮かべるのは、我が家に嫁ぎ、我の強い母親との間で苦労した妻。そんな苦労はさせたくない、と思う父だが、ふと目にした雛飾りの写真を見て……。こちらは、雛人形の蘊蓄とか、そういうものを多く集めて、そこからっていうのは、ちょっと著者らしくはない。実際はどうかわからない。でも、心配していたほど、妻が苦しんでいたのではないかもしれない。ならば娘も……という読後感は優しい。
しょーもないな、と思ったのは『壊れた時計』。非合法の仕事で、結果として人を殺してしまった俺。何もしなければ問題ない、という依頼主の言葉があったが、どうにも被害者がしていた時計が壊れたことが気になり……。これは完全に自滅というしかない話。ミステリとしては本当にしょーもない、という感じなのだけど、それが普通の人間なのかな? と……
一番、面白かったのは『レンタルベビー』。人間にそっくりで、子育てを体験できるロボットを手にしたエリー。しかし、そこで待っていたのは夜泣きやら何やらの連続。「こんなはずじゃなかった」とは思いつつも、期限前に返すと違約金が発生するので頑張って世話をするのだが……
自分は独身だし、子育てとかの経験とか、そういうものもないので想像するしかないけど、寝る間もなく、ひたすら振り回される、というのはその通りなのだろうと思う。そして、そんな苦労をしながらも、だんだんとそのロボットに愛着を抱き、守ろうとするエリーもまた母性ってこういうものなのかな? というのを感じる。言葉遣いはともかく、責任感の強いエリーもいい人だな、と思ったそのオチ。……まぁ、最近、芸能人の出産事情とかそういうのを見ていると、実際、こういうこともあるかも、と思わされた。
各編30ページ程度の分量。重厚感とは無縁。また、結構、オチが似ている部分も感じた。でも、軽く読むにはちょうど良い作品集かな? と感じる。

No.4510

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  •  『素敵な日本人』 東野圭吾
  • 「東野圭吾」のミステリ短篇集『素敵な日本人』を読みました。 [素敵な日本人] 「東野圭吾」作品は、先日読んだ『危険なビーナス』以来ですね。 -----story------------- 短編も、東野圭吾。 規格外のベストセラー作家、死角なし。 夢中になってイッキ読み。 寝不足必至のサスペンス。 それもいいけれど、読書は、もっと優雅なものでもあるのです。 意外性と機知に富み、四季折々の...
  • 2017.10.31 (Tue) 20:54 | じゅうのblog