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(書評)わざわざゾンビを殺す人間なんていない。

著者:小林泰三



全人類がウィルスに侵され、死ねば誰もが活性化遺体(通称・ゾンビ)となる世界。そんな世界の、ある研究成果の発表会場で、密室の中でゾンビ化して発見された。彼はいつ死んだのか? どうやってゾンビ化したのか? 騒然とする会場に現れた探偵・八つ頭瑠璃は、その謎を解くと宣言するのだが……
これ、凄いな。
物語は、冒頭に書いたような経緯で瑠璃が密室殺人の解明を依頼される。しかし、そこから始まる何者かによる襲撃を交わしながら様々なヒントを得て、やがて、謎を解く、という形で展開していく。
こういうと何だけど、物語としては、何者かによる襲撃。そこを回避して……という、アクションシーンがその多くを占める。ある意味、ゾンビ映画などのお約束のように、ゾンビは動くことが出来るし、噛まれればそのまま自らもゾンビ化してしまう、という怖さもある。しかし、一方で、その動きは鈍く、落ち着いて対処すれば決して、危険というわけではない。この説明がどれだけの人に通じるかわからないけど、魚釣りに行って、毒針などを持ったエイなどを釣り上げてしまったときの対処とかに似ている感じがする。しかし、そんなときに出会ったのは、それだけでは説明できないイレギュラーな存在で……
この作品の肉付けをするのは、その世界観の構築だろう。死んだあと、ゾンビ化してしまうウィルスが蔓延してしまった世界。それだけだと全人類が? となるわけだけど、例えば、畜産業という観点で考えると、それで畜産業は絶滅。しかし、肉を求める人々もおり、結果、ゾンビを食材とする形になってしまった、というあたりは「ありそう」と思える。また、法律上の問題。人間を殺せば、殺人になる。しかし、ゾンビならば? そして……。この辺りは、SF作品なども手掛ける著者ならではのディテールではないかと思う。また、作中に記される瑠璃の過去のエピソードも、上手く伏線回収に役立っている。いやー、お見事。
すべてが明かされてみれば、トリックなどは単純。しかし、そこに至るまでに色々と世界観を構築し、そこにある種の一発ネタ的な要素を加えていく、という構成力は流石の一言。著者の作品は、今回が初読で、会話の回りくどさとかに、ちょっと面倒と思った部分はあるのは否めないが、それでも、面白い。

No.4529

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