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(書評)月とうさぎのフォークロア。 St.3 天てらす月、其は夜にかがやくしろうさぎ。

著者:徒埜けんしん



夏になり、進路なども目の前に迫る朔たち。優月が総長となった天月一家のシマを巡るいざこざはありつつも、夏休みを満喫する日々。だが、そんなとき、天月一家の補佐をさせていた舎弟頭・瀬月内が襲撃によって重傷を負って……
なんか、色々な意味で、これまでの話とは違ってきたな、という印象。
まずは、朔を巡っての人間関係。前作で助けた七莉が「朔の女」を自称して迫ってみて、その一方で鈴や春は、好意を隠そうとはしない。その一方で、柏木さんはようやく自分の想いを朔にぶつけはじめて、白は……これまで通りに、クールに見せて、何気に既成事実を作り始める。なんか、ここだけ切り出すと、本当に普通のラブコメ作品っぽくなってきた。というか、本当、柏木さんの出番が増えてきたのは楽しい限り。
というところはありつつ、メインとなるのは、優月をいかに総長として認めるのか? という部分。
再興は果たしたものの、構成員は年寄りばかりで戦力としてはまだまだ頼りない天月一家。しかも、構成員たちも、そこまで優月を慕っているとも言い難い。そんな中で、瀬月内が襲撃を受けたことで、優月はその報復を目指す。しかし……
優月を天月一家の総長として認めさせるために必要なのは、優月に手柄を立てさせること。勿論、月夜見一家の総長として、優月を盛り立てなければ、朔自身の立場だって危うくなってしまう。そんな中、優月は報復を目指すものの、自らが力を示さねば、というプレッシャーにより視野が狭くなってしまう。そして、当然のように、自らが危機に陥ってしまう。そのような中で、朔が取ったのは、そんな優月の顔を立てつつも、最良の手を打つこと。
これまでの、朔が、そして、白が、まず矢面に立ってことを起こす、という話ではなく、あくまでもサポート役に徹する話。まぁ、朔や白が非常に「強い」存在であることは確かでも、彼らばかりが表に立ったら、ただのワンマンだし、ある意味、猪武者みたいなもの。そういう意味で、組織を巡る物語として、そして、その長となる存在が主人公である話として、こういう話が加わることで一段と深みがアップしたな、というのを思う。
そして、その話の中でよいアクセントになっているのが、最大の神衆組織である天照会の側の話。そのリーダーである大日照子が病に倒れた、ということで、その組織内での派閥争いが激化。今回の騒動には、その余波が強く影響している。先日、三国志の袁紹を主人公とした『孟徳と本初』(吉川永青著)では、古くからの名門であるからこそ、その派閥争いを調停し、まとめ上げねばならない袁紹の苦悩が描かれていたわけだけど、天照会のゴタゴタはそれと共通するものだし、また、優月を陰からサポートして……という朔のやり方もまた……という風に感じる。
朔自らが矢面に立つわけではないので、派手さは無いかも知れない。でも、組織を束ねる、というテーマでは非常に意味のある話だと思う。

No.4530

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