著者:井上真偽


父の死に伴い、莫大な遺産を受け継ぐこととなった女子高生・一華。その遺産を巡り、一族の者は彼女を事故に見せかけて殺害しようと目論む。一華が唯一、心を許す使用人の橋田は、彼女を守るためある人物を雇う。それは、事件が起こる前にトリックを看破し、犯人を特定してしまう探偵だった……
デビューからの作品が、論理学の教科書みたいだった『恋と禁忌の術語論理』であり、トリックでは不可能であることを証明しようとする『その可能性はすでに考えた』シリーズなど、トリッキーな作品を書いてきたのだけど、今回は事件が起こる前に解決してしまう、という作品集。
ただ、このタイプの作品だと北山猛邦氏の『猫柳十一弦』シリーズがあったなぁ、というのをまず頭に思い浮かべた。ただ、趣は大きく異なる。『猫柳』シリーズの場合、事件の渦中にいながら、その次の事件を防ぐために探偵が陰ながら動いて……という形で物語が展開していく。それに対して、本作の場合は、基本的には犯人側の視点で物語が綴られる。つまり、倒述形式のミステリ。
第1編では、商社に勤め、小麦によるアレルギー、つまりアナフィラキーショックを用いて一華を殺そうとする者。2編目は、毒蜘蛛を仕掛け、それに噛まれて命を落とす、という形を狙った者。そして、3編目は、無垢な子供をだまし、その子供に一華を殺させようとハロウィンイベントへと参加させる。それぞれ、トリックはかなり考えられており、犯人の視点だからこそどういう形なのかわかるけど、一華視点などでつづられていたら、そうそうわからないだろうと思う。しかし、いざ、実行という段になって探偵が現れて逆襲されてしまう。
いや……確かに、探偵が指摘するように看破できるきっかけのようなものはある。しかし、そもそも、探偵はどこにいたんだよ! っていう部分があるし(作中、一華たちですら、探偵と出会ったりはしていない)、流石に手回しが早すぎるだろう、という部分もある。そういう意味では、探偵が早すぎる、というタイトルはその通りかなぁ? という気はする。作中、最強の殺し屋、という触れ込みだった人物が何もせずに捕まったのは大笑いだし。
ただ、そのような中で、物語としては、一華が一族のものと対決をするのだ、という決意を固めたところで終了。下巻にて、どのような形で物語を転がしていくのか楽しみ。
No.4531

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父の死に伴い、莫大な遺産を受け継ぐこととなった女子高生・一華。その遺産を巡り、一族の者は彼女を事故に見せかけて殺害しようと目論む。一華が唯一、心を許す使用人の橋田は、彼女を守るためある人物を雇う。それは、事件が起こる前にトリックを看破し、犯人を特定してしまう探偵だった……
デビューからの作品が、論理学の教科書みたいだった『恋と禁忌の術語論理』であり、トリックでは不可能であることを証明しようとする『その可能性はすでに考えた』シリーズなど、トリッキーな作品を書いてきたのだけど、今回は事件が起こる前に解決してしまう、という作品集。
ただ、このタイプの作品だと北山猛邦氏の『猫柳十一弦』シリーズがあったなぁ、というのをまず頭に思い浮かべた。ただ、趣は大きく異なる。『猫柳』シリーズの場合、事件の渦中にいながら、その次の事件を防ぐために探偵が陰ながら動いて……という形で物語が展開していく。それに対して、本作の場合は、基本的には犯人側の視点で物語が綴られる。つまり、倒述形式のミステリ。
第1編では、商社に勤め、小麦によるアレルギー、つまりアナフィラキーショックを用いて一華を殺そうとする者。2編目は、毒蜘蛛を仕掛け、それに噛まれて命を落とす、という形を狙った者。そして、3編目は、無垢な子供をだまし、その子供に一華を殺させようとハロウィンイベントへと参加させる。それぞれ、トリックはかなり考えられており、犯人の視点だからこそどういう形なのかわかるけど、一華視点などでつづられていたら、そうそうわからないだろうと思う。しかし、いざ、実行という段になって探偵が現れて逆襲されてしまう。
いや……確かに、探偵が指摘するように看破できるきっかけのようなものはある。しかし、そもそも、探偵はどこにいたんだよ! っていう部分があるし(作中、一華たちですら、探偵と出会ったりはしていない)、流石に手回しが早すぎるだろう、という部分もある。そういう意味では、探偵が早すぎる、というタイトルはその通りかなぁ? という気はする。作中、最強の殺し屋、という触れ込みだった人物が何もせずに捕まったのは大笑いだし。
ただ、そのような中で、物語としては、一華が一族のものと対決をするのだ、という決意を固めたところで終了。下巻にて、どのような形で物語を転がしていくのか楽しみ。
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- 探偵が早すぎる(上)
- 探偵が早すぎる(上) 作:井上 真偽 発行元(出版):講談社(タイガ文庫レーベル) ≪あらすじ≫ 父の死により莫大な遺産を相続した女子高生の一華。その遺産を狙い、一族は彼女を事故に見せかけ殺害しようと試みる。一華が唯一信頼する使用人の橋田は、命を救うためにある人物を雇った。それは事件が起こる前にトリックを看破、犯人(未遂)を特定してしまう究極の探偵!完全犯罪かと思...
- 2017.10.20 (Fri) 23:45 | 刹那的虹色世界