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(書評)スーパーカブ

著者:トネ・コーケン



山梨の高校に通う少女・小熊。両親もなければ、友達もいないし、趣味もない。何もない彼女はある日、中古のスーパーカブを手に入れる。初めてのバイク通学。ガス欠。寄り道。そして、同じくスーパーカブで通う少女・礼子との出会い。ちょっとしたことで、彼女の日常が変わっていく……
なんというか、非常に独特な描き方をした作品だな、というのを感じた。
とにかく綴り方が独特。文章は非常に淡々と、「小熊は〇〇した。××が△△した」というある意味、事実関係を飾らずに綴るような文章。そして、その描き方こそが、主人公である小熊の変化を端的に描いているのだな、というのを感じさせる。
こういう何かを手に入れたことで、ちょっとずつ何かが変わった、という作品の場合、普通の作品、特にライトノベルレーベルなどと言われるようなところで出る作品の場合、そこで一気に感情が爆発したり、なんていう描写が入る。自分自身で考えても、例えば、新しい靴をおろした、とか、そういうものでも結構、テンションが上がる。まして、小熊のようにバイクを手に入れて、通学方法も変える、なんていったらかなり違うんじゃないかと思う。
でも、小熊の場合、あくまでもそれすら、表面的には淡々と……
けれども、せっかく足があるから、とちょっと寄り道をしたり、パンクの修理を覚えてみたりと、確実に変化する何か。劇的、ではないからこそ、何かが変わったんだ、というのを印象付ける。
多分、この主人公・小熊のキャラクター設定がうまいのだろうな。先に書いたように、自分自身だって、バイクとかを手に入れたら、自分の生活が大きく変わるぞ! とテンションが上がるはず。しかし、常にダウナーというか、何かをただ淡々と過ごすだけの日々を送る、という小熊だからこそ言葉とか、そういう部分ではなくて、行動で変化を感じさせる、ということに向いているのだろう。
故に物語としても、ほんとうに「ちょっとずつ」の変化。最終的には、結構、大胆なことをしでかすのだけど、これもそこまでのステップを踏んでいるだけに、何か納得が出来てしまう。……ただ、学校側の評価は著しく下がっている気が……
ともかく、非常に落ち着いた作品。繰り返しばかりになっているけど、この作品にしかない味があると思う。

No.4532

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