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(書評)図書迷宮

著者:十字静



あなたは思い出さなければなりません。心的外傷の奥に潜む父の仇を探し出し、奪われた名誉と失った魔法を取り戻すのです。吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)の少女、アルテリアと共に。そのために図書館都市を訪れ、ありとあらゆる本が存在する図書迷宮に足を踏み入れたのですから。あなたには一つの大きな障害があります。あなたの記憶は八時間しか保ちません。ですが、方法はあります。確かにあるのです。足掻いてください、あなたが人間足りうるために。全ての記憶を取り返すために。
ちょっと珍しく、裏表紙に書かれている粗筋をそのまま引用。
文庫で500頁あまりと、ライトノベルレーベルの作品としてはかなりの分量。しかも、粗筋でもわかるように、語りが「あなたは~」という二人称である、という珍しい形の物語。二人称で、っていうのは、式田ティエン氏の『沈むさかな』以来くらいじゃないかな? 自分が読んだのでは。
物語は、図書迷宮と言われる場所を歩いていた綜嗣は、一人の少女・アルテリアを守ろうとして殺し屋に殺されてしまう。しかし、実はアルテリアは吸血鬼の真祖で、彼女は綜嗣を吸血鬼として蘇らせていた。しかし、その代償として、綜嗣の記憶は8時間でリセットされてしまうことに。代わりにその記憶を支えるため、語り部でもある「魔導書」にそれを写し取ることと……。そして、その殺し屋・エリカはクラスメイトで……
前半くらいは、実は吸血鬼である綜嗣と、殺し屋のエリカが、学校では普通にふるまって(ただし、言い方の関係で不純な関係と思われている)、裏では殺し合いを、という関係が続く。ところが、後半に入ると……
前半の殺し合いの中で少しずつ説明される魔導書の特異性。特に、書に書き込むことで、記憶が改竄され、さらなる能力が目覚める。しかし、それが今度は新たな展開になっていって……。記憶の改竄。それが利用され、次々と物語がひっくり返されていく展開は怒涛の一言。その中で明らかにされていく真実。そして、最後に綜嗣が掴み取った真実は……
MF文庫Jでは、どの作品も同じ価格。故に分量も……というのがある中、その縛りを破壊した本作。確かに、この物語は分冊したのではその迫力が失われてしまうだろうし、この中の色々なところを削ったらそれはそれで味が失われてしまうだろう。二人称でのつづりとかクセのある文体でもある。でも、こういう形で出すのが最良で読みごたえがあるのは確か。

No.4539

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