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(書評)魔法使いにはさせませんよ!

著者:朝日乃ケイ



人類をおびやかす「侵略獣」。その脅威に対抗することが出来る魔法使い。それは、30歳を超えるまで純潔を守り通した男子のみが覚醒できる。そんな魔法使い候補生である鞘波黒刃は、学園に編入してきた「魔法少女」、白啾なしろにより貞操の危機に陥っていた。同じ「侵略獣」と戦う立場でありながら、なぜか、その候補生の将来の芽を摘み取ろうとする彼女の目的とは……?
30歳まで童貞だと魔法使いになる。ネタとしてしばしば目にするこの言葉。それを真面目に設定にするとは……
一応、粗筋を見るとホワイダニットを巡る話のように思えるけれども、最初からある程度、構図は見えている。元々、魔法使いと魔法少女は、「侵略獣」を倒す存在ではある。しかし、両者は互いに、その縄張りなどを巡って対立関係にある状態。そして、黒刃は学校での態度は悪いが、実力はトップクラスと言われている存在。だから、トップクラスの魔法使い候補を消してしまえ、というのが目的のひとつであることは最初から明白。
この部分の設定のつくり方はうまいと思う。
ライトノベルに限らず、アニメとかでもなぜか、主人公がヒロインに迫られて……みたいな話は多くある。でも、なぜ、迫られるのかイマイチわからない、っていうのがほとんど。しかし、この作品の場合、設定が設定なので、迫られる理由は納得できるし、主人公が抵抗する理由も。一応、主人公がそこまで魔法使いになりたい理由っていうのも、守りたいものがあるっていうのでわかるし。一種のジョークネタをちゃんと物語に昇華しているのは確か。
ただ、物語の展開は色々と詰め込みすぎたかな? という印象。候補生では実力がある、ということになっているけど、あまりにもチート過ぎるし(その理由も明らかにはされるけど)、そこに幼馴染となしろの対立(?)があり、魔法少女の中での派閥争いがあり……となるので色々と忙しい。また、魔法使い育成校の設定も、理事長がなしろの父親で、なしろに滅茶苦茶甘いとかでグダグダとか、シリアスなのかギャグなのか、いまいちどっちつかずになってしまったように思う。そもそも、目的があるとはいえ、なしろとかが、自分の身体を捧げてってところに対するってのに抵抗がないのかな?(つーか、親父はそれでいいの?) と思うのだが……
主人公に迫る存在がいる。主人公がかたくなに貞操を守ろうとする。その部分の設定がうまいからこそ、他のところが弱かった、と思えて仕方がない。

No.4543

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