(書評)桐谷署総務課渉外係 お父さんを冷蔵庫に入れて!

著者:加藤鉄児



往年の名優・十文字豪の遺体が誘拐された? テレビ中継を交えた葬儀の時が刻一刻と迫る中、刑事嫌いの豪の娘・凛子は刑事課の協力を断固拒否。代わりに協力することになったのは、「クレーム処理係」こと、総務課交渉係の吉良と、新人の夕張真知子。犯人との交渉をすることとなった真知子に対し、要求された身代金は5761万7559円という中途半端なもので……
なんつーか、このタイトル、どういう作品なのかサッパリわからないよ。正直、もっとシュールな話かと思っていた。けど、なかなか面白い誘拐作品だった。
物語は、交渉にあたることとなった真知子と、誘拐犯である板倉の視点を中心に描かれる。
元々、警察の側とすれば、被害者の命の危険があるからこそ重大な事件である「誘拐」。すでに死んでいるわけだから、立場としてはただの窃盗。もし、あったとしても死体損壊程度。犯人との交渉などはもってのほか。しかし、被害者の家族とすれば……。一方、犯人の方にも大きな誤算が。それは、十文字の遺体のみを奪うつもりが、同じ日に死んだホームレスの遺体まで押し付けられてしまって……。そんな中、渉外課は刑事化の方針に反して、勝手に犯人とのやり取りを開始する。
犯人とやりとり。通話に海外回線を用いる、ということもさることながら、具体的なやり取りと警察を避けるために2ショットチャットを用いる。そして、身代金のやり取り……。仮に十年後、二十年後に同じトリックを使ったら、もしかしたら「古い」とかって言われるかもしれないけど、今現在、旬なトリックを用いてきたところはなかなか斬新で読ませる。
そして、中途半端な額の身代金の意味するもの。警察とのやり取りのクレバーな様子とは裏腹に、板橋の行動はホームレスの遺体を捨てようとせず、ちゃんと処理しようとし、その家族を探したりまでする。その理由は何なのか? そこにあるのは、十文字が過去に関わった事件。犯罪を巡っての冤罪と被害者。例えば、殺人犯として逮捕されたけど、様々な物証から無罪だった、というのであればまだ被害者にとっても怒りのぶつけようがある。しかし、そもそも加害者かそうでないのかがグレーゾーンのままだったら? そして、犯罪に加担したかどうか、とは別の部分によって有罪・無罪の判断が変わってしまっていたとしたら? 結構、真面目なテーマも内包されていて、そこが物語の魅力の一つになっていると思う。
最終的にみると、結局、そこが真相なのか! と思うところもあるのだけど、犯人側の策略と社会問題的なテーマ。双方がしっかりとしていて、なかなか読み応えのある作品に仕上がっている。

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