(書評)100億人のヨリコさん

著者:似鳥鶏



苦学生(というほど勉強熱心ではないが、とにかく金がない)の小磯は、入学以来、暮らしていた学生寮を出て、大学の敷地の果てにある富譲寮へと移り住むことになった。そこはまるで廃屋。そして、変人たちが集う場。そこには、得体の知れないキノコや昆虫、さらには、数々の怪奇現象が待っていて……
なんか、読んでいて思ったのが、森見登美彦氏の作品のようだ、ということ。
先に書いたように廃屋のような寮。そこには、変な人たちが住んでいる。食用とは思えない酒……というか、アルコールを飲み、近くの池で取れた鯉などの魚や、パンツから生えたパンツ茸というキノコを食する。壁には謎の数式などが無数に書かれ、さらに、トイレから血が流れたり、夜になるとヨリコさんという血まみれの幽霊らしき存在が見つめてきたりする。最初は、戸惑う小磯だったが、しばらくすれば特に害がないから、とそれも気にせず、変人たちとの生活にも慣れていって……と進んでいく。この辺りのツッコミどころがある設定だけど、それが多すぎて、ごくごく普通の日常になってしまう辺りって、森見作品の世界観に近いと思うのだ。
ただ、そこからの展開が著者らしいところ。いざ、ヨリコさんの存在に慣れてきたところで、「じゃあ、ヨリコさんって何なの?」と調べ始めることに。変人であっても様々な技能を持った住人達。カメラなどを駆使して撮影を試みたり、それぞれの証言を集めて学説などを検証していったり……。そうして、ある仮説が出てきたところで……
もはや、終盤はとんでもない状況へ。けれども、元々が変人たちの集いなので、緊張感があるんだかないんだかよくわからないやり取りが相変わらずで、何ともいえない独特のノリへと転化。そして、その状況について、一応の決着がつきつつも決して解消されたわけではないのだけど、「皆が慣れた」というオチは最早大笑い。序盤で小磯がたどった道と全く同じ状況に、っていうのは、これも一つの伏線だったのだろうか?
物語に出てくるキャラクターたちもクセのある面々なのだけど、嫌みがなくて楽しい。特に、寮で生活をしている小学生のひかりちゃんとか、妙にたくましくて、ある意味、一番、しっかり者だと思うし。そういうところで読ませるのも流石だな、と思う。
はっきり言って変な話。でも、だんだんと規模が大きくなっていって……のドライブ感がたまらなかった。

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