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(書評)先生とわたしのお弁当 二人の秘密と放課後レシピ

著者:田代裕彦



有名料理研究家である父の入院により、壊滅的な食生活を送ることとなってしまった女子高生のちとせ。そんな彼女を見かねて、父の教え子であり、ちとせの高校の教師である小函先生がお弁当を作ってくれることに。料理とは無縁に見える鉄面皮である先生だが、作る料理は絶品。喜んだのもつかの間、自分でお弁当を作っている、といったことでちとせは思いがけないトラブルに巻き込まれてしまって……
というところから始まる連作短編集。全3編収録。
富士見ミステリー文庫からデビューし、最近は謎解き要素のないライトノベルなども書いてきた(ただし、残念ながらあまり長く続いていないない)著者だけど、やっぱり、こういう形のミステリ作品が一番、しっくりくるなぁ、という印象。
第1話は、冒頭に書いたように、先生にお弁当を作ってもらうことになり、しかも、それは自分で作った、と周囲には説明。ところが、クラスメイトのある男子が、同じメニューの弁当を。しかも、郁はその男子に恋していて……。ここでの謎は、なぜ、その男子は同じメニューを作ったのか? 勿論、先生がその男子にも作っているわけではない。とすれば、なぜ?
謎解きとしては、結構、シンプルである。でも、そんな理由を知ったあとのちとせと郁のやりとりが印象的。確かに、純情なんだろうけど、それをやられたら……っていうのは間違いないよね(笑)
一方、ひょんなことから元芸能人の茜と仲良くなったちとせと郁。お昼を共にするようになるが、茜に意地悪をする女子の嫌がらせが続き……。こちらは、言葉の魔力とでもいうようなものだよな……。確か、『美味しんぼ』とかでも、同じような言葉がよく出ていると思うけど、それを実証するようなことを目の前でやられてしまった。そのコンプレックスは……。こちらは、先生が提案する解決策がすべてを分かった上での「大人の対応」とでもいうような感じでよかった。
そして、ちとせの母の思い出を巡る第3話。どうしても、亡き母が作ってくれたお弁当を思い出せないちとせ。壊滅的な料理下手だったという母が作った弁当だが、幼い日のちとせは、それが大好きだったという。しかし、父の日記などを見ても、ヒントとなりそうなものはごくわずか。しかし、そこから先生は再現を試みて……。こちらも第2話から続いての言葉の魔力を感じる。大好きだった母。でも、ちとせ自身が料理が出来ないコンプレックス。第1話から張れられていた伏線をしっかりと回収してのまとめ方はやっぱり上手い。
こう見ると、物語はちとせ自身の周囲、というのでまとめられていたのだな、と感じる。逆に言えば、先生については殆どわからないまま。続編が出るなら、是非ともそちらを期待したいな。

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