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(書評)死刑にいたる病

著者:櫛木理宇



鬱屈した日々を送る大学生・筧井雅也のもとに届いた手紙。それは、稀代の連続殺人鬼であり、子供時代、彼がよく通っていたパン屋の店長であった榛村大和からのものだった。20以上もの殺人の疑いをもたれ、起訴された9の殺人により、第1審で死刑判決が出た榛村。だが、その9つのうち、1つの殺人は自分がやったわけではない、という。かつて、自分のよき理解者であった榛村に頼まれ、事件の再調査を開始する雅也だったが……
『チェインドッグ』の改題作。
なかなか考えさせられる話だなぁ……。
物語の大半は、雅也が榛村の起こした事件の関係者に聞き込みをする、というシーンで占められる。榛村とは何者だったのか? その生い立ち。幼少期の彼の様子。あるものは、不幸な生い立ちである、と言い、あるものは、幼いころから不気味な存在であった、と言う。殺人で逮捕される前も、いくつかの事件で逮捕されたことがある。そんな中、犯罪加害者の更正に力を尽くしていた女性と出会うが……
榛村が連続殺人に走ったのは、その生い立ちのためなのか? しかし、生来のもの、と感じるような証言もチラホラ……
そして、その中で、榛村が言っていた「1つの冤罪」。確かに、榛村の犯行は秩序型と言われるもので、一定の法則性をもって行われていた。明らかに、その事件だけは、その法則性から外れている。警察は、被害者の容姿などから、あまり気にしていない、というが腑に落ちない。そして、その例外の被害者の周囲には、1人の男が……
どんどん掘り下げられていく榛村という人間。それを調べるうちに、どんどん事件、そして、榛村という人物に引き込まれていく雅也。調べ始めるまでの雅也を知っている知人たちは、雅也が生き生きとしてきたように思えるという。実際、何かに熱中している人間というのは、生き生きとしている、ということはあるはずで、すごく納得できるところ。何しろ、雅也と同じように、読んでいる自分もまた榛村に、そして、事件に引き込まれていたのだから。そして、そう考えれば考えるほど、榛村が言う「冤罪」だけが浮いているように見える。そして、そんな中で明らかになる雅也自身の出生の秘密。まさか、榛村は雅也の……? 影響は受けていない、と言いつつ、確実に影響を受けていく……。そして、その中での真実……
読み終わってみると、すごく怖い。
人間と人間の関係。何かやり取りをしていれば、良くも悪くも影響を受けることは当然。その中で、一見、良い意味での影響だと思っていても、実は……。そんなことを考えざるを得ない。そして、もし、その影響についてもまた、完璧な計算の上に成り立っていたら……。雅也自身は決別できても、しかし、同時進行的に……その結末の印象は凄い。
物語としては、それほど起伏があるわけではない。でも、その中で、雅也とともに榛村、事件に引き込まれ、強烈なインパクトを残す。読み応え十分な作品。

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