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(書評)サイメシスの迷宮 完璧な死体

著者:アイダサキ



警視庁特異犯罪分析班に異動となった神尾文孝は、優秀ではあるが、協調性が全くないプロファイラー・羽吹充とコンビを組むことに。そんな配属初日から、ラップで包まれ、まるで繭にくるまれているかのような女性の他殺体が発見される、という事件に遭遇する。見たものをすべて記憶する、という能力を持つ羽吹に振り回されつつも捜査に当たる中、神尾は羽吹の過去について知ることとなり……
買ったあとに知ったことは、著者は普段、BLモノ、などを中心に活躍している人らしい。おかげで、この本を持っています、とAmazonに登録したら、Amazonの「たこやきさんにお勧め」という本がBL本だらけになって困っている(笑) いや、私、そちらの本には興味ないんですけど……(笑)
さて、本題。河川敷で発見された他殺体。その遺体は目をくりぬかれ、ラップで包まれた状態で発見される。異常殺人ということは明らかであるが、事件現場を見た羽吹はすぐさま、「第2、第3の事件」を予告する。なぜならば、その現場近くにあったメッセージから、「見ざる」「聞かざる」「言わざる」を模したものと思われるため。そして、実際に、第2の遺体も……
先に著者のプロフィールを綴った。で、本作はBL本ではない。でも、物語の中心にあるのは、神尾と羽吹が信頼関係で結ばれていく、という過程が中心となって綴られる。協調性に欠け、過去に何度となく暴走して、部下が離れていった羽吹。実は、過去、彼は誘拐される、という事件に遭遇しており、その後、見たものをすべて記憶してしまう、という能力を得ることとなった。しかし、一見、便利なようなその能力は言い換えれば、「忘れることが出来ない」ということであり、だからこそ、周囲と距離を置いている、ということを神尾は知ることに。
さらに、羽吹の過去。幾度となく暴走し、部下が離れてしまったり、はたまた左遷してしまった羽吹。だからこそ、一見、とっつきにくい格好を装っていても、神尾を気遣い、彼に迷惑が掛からないように自重していることも知る。そんな中で、捜査本部の方針は明らかに羽吹の見解と異なる方向へと動き始める。羽吹の能力、プロファイリングの確かさを知った神尾は、逆に、羽吹をたきつけて……。不器用だけど、神尾に気を使っている羽吹と、そんなことを知って、自らが暴走をし始める神尾の関係というのが丁寧に描かれており、素直に「熱い」話に仕上がっている。
事件そのものの流れは比較的シンプルなのだけど、その中で描かれる防犯カメラの弱点というアイデアもなかなか面白い。
女性は何者かに拉致され、殺害されたと思われる。拉致される直前までの足取りも判明している。しかし、行方不明となったのは1か月以上も前。そこから1か月以上もどこかに監禁されていた。それは、防犯カメラの映像は、数週間程度で消され、上書きされることでデータが消えてしまう、という弱点を熟知してのもの。しかも、成人の失踪などについては、失踪届が出されても、警察はそれほど積極的に動かないことも知ってのもの。防犯カメラがあれば……という前提を覆しての事件のつくり方はうまいな、というのを素直に思う。反対に、犯人特定の手がかりも、その弱点のさらに思わぬ弱点を突く形であるし。
物語的には、真の黒幕の存在が示唆されて、というところなので、今後につなぐ形になるのだろうけど、羽吹と神尾の関係性の丁寧な描き方。そして、防犯カメラの弱点を突いた犯行。その2点が非常に良かった。

No.4570

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