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(書評)冤罪犯

著者:翔田寛



平成29年、船橋市の休耕地でブルーシートで覆われた幼女の遺体が発見された。捜査の中、刑事の香山は、この事件が7年前に起きた事件に似ていることに気づく。その7年前の事件では、不可解な形で発見された証拠物によって田宮という男が逮捕され、無罪を訴えながら自殺していた……。そんな中、香山は2つの事件をつなぐ新たな証拠を発見するが……
久々に読んだ著者の作品。この作品の前に読んだ『真犯人』もそうだけど、本作も2つの時代を挟んだ事件。
物語の鍵となるのは、7年前の事件と、今、目の前で起きている事件は同一犯なのか? それとも、ただ模倣しただけなのか?
7年前、立て続けに起きた幼女誘拐殺害事件。解決の糸口が見えない中、千葉県警は世間の批判にさらされていた。そんな中、容疑者として浮かび上がったのが田宮という男。しかし、逮捕したは良いが、状況証拠ばかりで物的証拠に欠ける状況。しかし、2度目の家宅捜索の際、一度目には見つからなかった証拠、被害者の持っていたぬいぐるみに使われている意図が、彼の服から発見された……。
しかし、今、再び考えてみると、極めて不自然な発見のされ方だし、同じような事件が起きていることを考えると、田宮は本当に冤罪だったのかもしれない。そんな思いをどうしても捨てきれない香山や、その部下の増岡。しかし、本部は、模倣犯という方向でしか事件を追わず香山らが過去を追うことすら妨害し始める。そのため、ますます、疑惑を思わずにはいられなくなって……
警察はなぜ、信頼をされているのか? と言えば、犯罪があっても速やかに犯人を捕まえるから。そして、その捕まえた人物が間違いなく犯罪者である、とすることで周囲に安心を与えるから。もし、これが冤罪だとすれば、犯人を逃したことになるし、無実の人に迷惑をかけてしまったことになる(特にこの事件の場合、被疑者が死亡しているだけに) だからこそ、過去は過去、今は今、で推し進めようとする組織の論理っていうのはわかるし、その面倒くささも描かれているのは確か。また、その冤罪に導いてしまった警官が、正義のために、というというのもわからなくはない。
ただ……正直なところ、本作の場合、香山らに圧力をかける、というくらいならともかく、終盤のやり方はあまりにも強引でお粗末な感じなんだよな。本当に被疑者に密告をして、疑っているとはいえ、警察仲間を襲わせるとか、いくらなんでも無理矢理でしょ。それに、真犯人にしても、事件を起こした動機とか、そういうところがいまいちわからなかった。
なんというか、冤罪を作り出してしまった部分についてが主で、肝心の現在の殺人の方が随分とおざなりに感じられてしまい、ちょっとバランスが悪いかな? という風に思う。

No.4579

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