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(書評)ブルーローズは眠らない

著者:市川憂人



両親の虐待に耐え兼ね、家を飛び出した少年エリックは、遺伝子研究を行うテニエル博士の一家に保護される。博士の研究を手伝いながら過ごすエリックだったが、そこにいる「実験体72号」の影におびえていた。一方、ジェリーフィッシュ事件で閑職に回されていた刑事・マリアと蓮は、同時期に「青いバラ」作成したテニエル博士とクリーヴランド牧師について調べるよう命令を受け……
ということで、シリーズ第2作となる作品。
物語はエリックのパートである「プロトタイプ」と、マリアたちのパートで構成される。
正直なところ、序盤は話がどこへ向かうのかよくわからなくて混沌とした印象。そもそも、マリアたちがなぜ、青いバラを作った二人に聴取をしなければいけないのか、というのがよくわからず、そこへ遺伝子がどうこうとか、そういう話が続いていくため。そのため、ちょっと「あれ?」という感じがあった。むしろ、序盤で引き込まれたのはプロトタイプの方。両親を殺害し、逃亡した、というエリックが博士一家に保護される。そして、博士から遺伝子についての薫陶を受けながら、日々を過ごす。しかし、その家には化け物が住んでおり、さらに迫ってくる警察の足音。サスペンスフルな展開で、どんどん引き込まれた。
そして、マリアのパートでも事件が……。テルニエ博士が殺害される。しかも、不可解な密室で。さらに、調査に訪れていた研究者も。そのトリックは? そして、エリックとマリアの事件の関連性は……?
そして、密室トリックそのものよりも、その中心となっているのは二つのパートの関係性と言ったところだろうか。物語のポイントとなるものは結構、あっさりと書かれていたので、それが明らかになったとき「あれ?」という感じで読み直す羽目になったのは確かとしても。逆に言うと、密室トリックはちょっと小粒な気もする。でも、その分、エリックらの決意。その悲壮な覚悟が垣間見える真相が印象的だった。
本格ミステリの形はとっているけど、密室トリックそのものよりも、作品全体に仕掛けられたトリックで見せるタイプの作品、と言えるのかな? と思う。

No.4583

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