著者:加納朋子


敬遠難により、新規募集を停止した萌木女学園大学。最後の4年間を終了し、静かにその歴史に幕を下ろす……はずだった。しかし、様々な理由から、全員を卒業させようと下げまくったハードルをクリアできなかった学生たちが。温情により、半年の猶予が与えられ、寮生活をしながらの補修で卒業を目雑ことに。ただし、そこは、外出、ネット、面会などが禁止されていて……
という連作短編集。
冒頭に主な舞台設定的なものを書いたのだけど、実は1編目『砂糖壺は空っぽ』だけは初出が異なり、物語のカラーがちょっと異なる。一応、萌木女学園の名前は出てくるのだけど、他とのリンクは少ない。
その1編目は、幼いころから周囲との距離感を感じていた「僕」。周囲からはバカにされ、しかし、どうしてもそれを受け入れることが出来なかった。そんなとき、塾で知り合った少女・ミエ。足に障害を持ちながらも、それを感じさせない彼女に惹かれていくが……
前にも書いたのだけど、やっぱり著者は白血病の闘病を経験してテーマが大きく変わったんじゃないか、というのを感じる。1編目は、ミステリとしての仕掛けなどもあるが、その中にあるのは、自分の抱えている問題と、それを受け入れるのか、そうではないのか? そして、その中でもどうしようもない現実も……。どちらかというと、温かい雰囲気もある作品集の中にあって、悲しみを含んだ結末が印象に残る。
そして、粗筋のように寮生活をするようになった学生たちを描いた2編以降。どうしても起きることが出来ない。完璧に思えるのに、なぜか留年してしまった学生……。1編目のように、どうしようもない結末、というのはないのだが、それぞれが何らかのハンデを抱えており、しかし、そんな学生たちを理事長や関係者たちは様々な形で見守っていく。寮生活の中で、仲良くなったルームメイトとの友情であったり、はたまた、理事長らの陰ながらの策略であったり……。そんな理事長らの行動に「優しさ」とは何なのか? というのを思わずにはいられなかった。
そして、そんな学生たちの卒業式。そこで語った理事長の過去……
まだまだ女性の立場が低かった時代、女性に教育を、と父と共に始めた教育機関。しかし、そんな多忙な日々の中、理事長の姉は……。そして、そんな悲しみを抱きつつも始めた学園だったが、もろもろの事情により全員を卒業させることが出来た、という年はなかった。だからこそ……
理事長の理想と挫折。そんな過去がったからこその優しさ。ただ、面倒見がよい、優しい……というのではなく、しっかりとすべてがつながったことにより、ただ温かいだけではない、本当の優しさ、というのを感じることが出来た。
No.4618

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当記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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敬遠難により、新規募集を停止した萌木女学園大学。最後の4年間を終了し、静かにその歴史に幕を下ろす……はずだった。しかし、様々な理由から、全員を卒業させようと下げまくったハードルをクリアできなかった学生たちが。温情により、半年の猶予が与えられ、寮生活をしながらの補修で卒業を目雑ことに。ただし、そこは、外出、ネット、面会などが禁止されていて……
という連作短編集。
冒頭に主な舞台設定的なものを書いたのだけど、実は1編目『砂糖壺は空っぽ』だけは初出が異なり、物語のカラーがちょっと異なる。一応、萌木女学園の名前は出てくるのだけど、他とのリンクは少ない。
その1編目は、幼いころから周囲との距離感を感じていた「僕」。周囲からはバカにされ、しかし、どうしてもそれを受け入れることが出来なかった。そんなとき、塾で知り合った少女・ミエ。足に障害を持ちながらも、それを感じさせない彼女に惹かれていくが……
前にも書いたのだけど、やっぱり著者は白血病の闘病を経験してテーマが大きく変わったんじゃないか、というのを感じる。1編目は、ミステリとしての仕掛けなどもあるが、その中にあるのは、自分の抱えている問題と、それを受け入れるのか、そうではないのか? そして、その中でもどうしようもない現実も……。どちらかというと、温かい雰囲気もある作品集の中にあって、悲しみを含んだ結末が印象に残る。
そして、粗筋のように寮生活をするようになった学生たちを描いた2編以降。どうしても起きることが出来ない。完璧に思えるのに、なぜか留年してしまった学生……。1編目のように、どうしようもない結末、というのはないのだが、それぞれが何らかのハンデを抱えており、しかし、そんな学生たちを理事長や関係者たちは様々な形で見守っていく。寮生活の中で、仲良くなったルームメイトとの友情であったり、はたまた、理事長らの陰ながらの策略であったり……。そんな理事長らの行動に「優しさ」とは何なのか? というのを思わずにはいられなかった。
そして、そんな学生たちの卒業式。そこで語った理事長の過去……
まだまだ女性の立場が低かった時代、女性に教育を、と父と共に始めた教育機関。しかし、そんな多忙な日々の中、理事長の姉は……。そして、そんな悲しみを抱きつつも始めた学園だったが、もろもろの事情により全員を卒業させることが出来た、という年はなかった。だからこそ……
理事長の理想と挫折。そんな過去がったからこその優しさ。ただ、面倒見がよい、優しい……というのではなく、しっかりとすべてがつながったことにより、ただ温かいだけではない、本当の優しさ、というのを感じることが出来た。
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