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(書評)緑の窓口 樹木トラブル解決します

著者:下村敦史



市役所に新設された「緑の窓口」。植物に関するトラブル相談部署に配属された区役所職員の天野優樹と先輩の岩浪。彼らの元へ入った相談は、庭の杉の木を巡り、家族仲が悪化している、というもの。早速、その家へと向かう二人だったが、そこを現れたのは樹木医の柊紅葉で……(『杉を診せてください』)
から始まる連作短編集。全6編を収録。
著者の新境地、という宣伝コピーが掲げられているのだけど、確かにこれまでの作品とは違った作風という印象。これまでの作品は、社会問題などをテーマとした「重い」作品という印象が強いのだけど、本作は樹木に関するトラブル相談の中に人情などを、という日常の謎、お仕事小説という印象の作品になっている。
例えば、1編目。冒頭に書いた話なのだけど、杉がどういう形でトラブルに元になっているのか、というと……。樹齢100年を超えたような大木。しかも、やや元気がない。そして、何よりも、その杉があると日当たりが悪くなり、家族は迷惑。しかし、姑は絶対にそれを伐採するな、と妻と喧嘩をしている。一度は、優樹らの説得で解決したかと思われたが……。結構、悪意のある話なのだけど、花言葉で解決とか、ちょっと強引かな? と思えたところも。
個人的にベストは2編目の『クヌギは嘘をつきません』。同じ区役所職員の荻村さんがトラブルに巻き込まれた。そのトラブルというのは、彼女の家に建つクヌギが倒れ、道路に停めてあった車を壊し、修理代を請求されている、というもの。しかし、紅葉はそれは嘘であると見抜く……。自分自身、子供のころ、カブトムシとかを捕まえるためにクヌギの木を見たり、とかっていうことはしたのだけど、紅葉の説明を聞いていて、その気がどんな感じだったのかを見ると「確かに」思えた。最終的なオチも結構好きだったり。
ただ、普段とは違い、ギャグっぽい描写を入れたのだけど、ちょっと……と思うようなところも。例えば、3編目に出てくる老人。認知症か? という行動が実は樹を大切にしていた、というのは良いとしても……言動とかはちょっとやりすぎというか何というか……
そんな物語は、紅葉と母の確執という形に繋がっていって……での最終編。1編目のエピソードが、ちゃんと最終編の伏線になっているとか、そういう意味ではしっかりと序盤のエピソードとつなげているのは確か。ただ、最終的にわかる和解とかの方が印象に残り、ちょっと物足りなさも感じた。確執の原因は、何となく予想できたし……
まぁ、肩肘はらずに読める作品なので、何か軽く読みたい、ってときには良いのかな?

No.4625

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