著者:久坂部羊


国立大学病院の最高峰・天都大学医学部付属病院。その院長が急死した。新しい院長を選ぶべく、院長選挙が近く行われる、という状況の中、フリージャーナリストである吉沢アスカは医療崩壊を題材に、院長候補である4人の副院長たちに取材を申し込むのだが……
なんじゃこりゃ?(苦笑)
物語としては、先に書いた粗筋の通り。アスカが、院長候補である4人の副院長たちに取材を申し込み、その話をきく。それぞれ、当初こそ真摯なように取材を受けるのだが、周囲の人間に対する尊大な態度。はたまた、他の専門領域に対する侮蔑的な態度。さらに、医療改革と言いながら、彼らの目指しているものが、それぞれ、自分の医局を大きくし、いかに自らの権力を強めるか、しか頭にない。そんな状況が、ドタバタ劇のような格好で描かれていく。
作中でも出てくるのだけど、『白い巨塔』などで描かれるように、権力争い、派閥争いというのはあるのだろう。また、大学病院という世界において、権力者としての教授が一般社会の常識とかけ離れてしまう、なんていうことも(ツイッターなどで、医学部に限らず大学教授の職にある人がおかしな言動をとっている、なんていうのも目にしているし) そういう意味では、実際にあるものをより極端に描いているのだろう、というのは強く感じられる。
ただ……
そもそも、著者の作品だけでも、こういう描き方の作品が何作かあるだけにそもそもとしてあまり新鮮味がない。例えば、ガンに対する新制度を、というときに、外科、内科、免疫療法、放射線療法と言った治療の専門家たちが主導権争いを繰り広げる『虚栄』とかとやっていることが似ている。それでも、「ガン治療」という中心線があった『虚栄』と比べて、単純に権力争いとそこから生じるドタバタ劇に終始する本作はノリが異なり。個人的には、ちょっとそのノリについていけないところがあった。
一応、そんな中で、前院長の死というのが終盤になって出てきてまとめられ、副院長たちとは距離を取って、という人物も……というシニカルなオチは待っているのだけど……
やっぱり、ちょっと長編をこのネタだけでやるには長すぎたんじゃないかな、という思いが強く残った。短編くらいであれば、それほどタレることなく楽しめたと思うのだけど……
No.4634

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当記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
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国立大学病院の最高峰・天都大学医学部付属病院。その院長が急死した。新しい院長を選ぶべく、院長選挙が近く行われる、という状況の中、フリージャーナリストである吉沢アスカは医療崩壊を題材に、院長候補である4人の副院長たちに取材を申し込むのだが……
なんじゃこりゃ?(苦笑)
物語としては、先に書いた粗筋の通り。アスカが、院長候補である4人の副院長たちに取材を申し込み、その話をきく。それぞれ、当初こそ真摯なように取材を受けるのだが、周囲の人間に対する尊大な態度。はたまた、他の専門領域に対する侮蔑的な態度。さらに、医療改革と言いながら、彼らの目指しているものが、それぞれ、自分の医局を大きくし、いかに自らの権力を強めるか、しか頭にない。そんな状況が、ドタバタ劇のような格好で描かれていく。
作中でも出てくるのだけど、『白い巨塔』などで描かれるように、権力争い、派閥争いというのはあるのだろう。また、大学病院という世界において、権力者としての教授が一般社会の常識とかけ離れてしまう、なんていうことも(ツイッターなどで、医学部に限らず大学教授の職にある人がおかしな言動をとっている、なんていうのも目にしているし) そういう意味では、実際にあるものをより極端に描いているのだろう、というのは強く感じられる。
ただ……
そもそも、著者の作品だけでも、こういう描き方の作品が何作かあるだけにそもそもとしてあまり新鮮味がない。例えば、ガンに対する新制度を、というときに、外科、内科、免疫療法、放射線療法と言った治療の専門家たちが主導権争いを繰り広げる『虚栄』とかとやっていることが似ている。それでも、「ガン治療」という中心線があった『虚栄』と比べて、単純に権力争いとそこから生じるドタバタ劇に終始する本作はノリが異なり。個人的には、ちょっとそのノリについていけないところがあった。
一応、そんな中で、前院長の死というのが終盤になって出てきてまとめられ、副院長たちとは距離を取って、という人物も……というシニカルなオチは待っているのだけど……
やっぱり、ちょっと長編をこのネタだけでやるには長すぎたんじゃないかな、という思いが強く残った。短編くらいであれば、それほどタレることなく楽しめたと思うのだけど……
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