著者:藤まる


「それじゃあキミを死神として採用するね」 佐倉真司は、同級生の花守雪希から「死神」のアルバイトに誘われる。成仏できずにいる「死者」をあの世へと成仏させる、という仕事に胡散臭さを感じるが、「最後まで勤めればどんな願いごとも叶えてもらえる」という話に乗ることにしたのだが……
結構、ヘビーな話が多かったな……というのが何よりもの印象だろうか。
物語の設定としては、世の中に生きている人の中には、本来、死んでいるはずの「死者」が紛れ込んでいる。彼らは、生前の心残りから現世に残っている。そして、成仏すると、「死んだはずの日」に遡って人々の記憶からその存在が消えてしまう。
で、なんでヘビーと思ったのかというと、端的に言って、真司が失敗と感じるような結末が多いから。例えば、2編目。死者である黒崎の望みは、別れた子供からの手紙を探すこと。しかし、それを見つけることが出来ず、しかも、横柄な黒崎に暴言を吐いたことで……。諦めさせることで成仏させる、というのも一つの仕事とはいえ……後悔の残る後味が……
そして、4編目。母親から虐待を受け、殺された少女。死者となった彼女の望みは、母親を殺すということ。それは流石に、という中、同じ死者である雨宮の協力も得て、彼女の書いた「終活ノート」に基づいた行動をとっていく真司と雪希だったが……。一生懸命に彼女の願いを、という黒崎の時の後悔を繰り返さないようにする。その結果は、完全なる裏切り……。頭の片隅にはあったはず。けれども、それに目をつむった結果、全く真逆の形に、というかなりブラックな結末が皮肉で印象的。
そして、その事件の中で明らかになった雪希の秘密……
これはメタ視点で見て、何となく予想できた部分もあったのだけど、ここまでのエピソードでの後悔。ふざけていると思われた雪希の中にあった迷い。そういうものを知り、だんだんと惹かれていくのだが……。生きていることの大切さ、そういうものが感じられる話。そして、一度は消えてしまったその出来事がしっかりと活きているという結末は優しかった。
No.4639

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当記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
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「それじゃあキミを死神として採用するね」 佐倉真司は、同級生の花守雪希から「死神」のアルバイトに誘われる。成仏できずにいる「死者」をあの世へと成仏させる、という仕事に胡散臭さを感じるが、「最後まで勤めればどんな願いごとも叶えてもらえる」という話に乗ることにしたのだが……
結構、ヘビーな話が多かったな……というのが何よりもの印象だろうか。
物語の設定としては、世の中に生きている人の中には、本来、死んでいるはずの「死者」が紛れ込んでいる。彼らは、生前の心残りから現世に残っている。そして、成仏すると、「死んだはずの日」に遡って人々の記憶からその存在が消えてしまう。
で、なんでヘビーと思ったのかというと、端的に言って、真司が失敗と感じるような結末が多いから。例えば、2編目。死者である黒崎の望みは、別れた子供からの手紙を探すこと。しかし、それを見つけることが出来ず、しかも、横柄な黒崎に暴言を吐いたことで……。諦めさせることで成仏させる、というのも一つの仕事とはいえ……後悔の残る後味が……
そして、4編目。母親から虐待を受け、殺された少女。死者となった彼女の望みは、母親を殺すということ。それは流石に、という中、同じ死者である雨宮の協力も得て、彼女の書いた「終活ノート」に基づいた行動をとっていく真司と雪希だったが……。一生懸命に彼女の願いを、という黒崎の時の後悔を繰り返さないようにする。その結果は、完全なる裏切り……。頭の片隅にはあったはず。けれども、それに目をつむった結果、全く真逆の形に、というかなりブラックな結末が皮肉で印象的。
そして、その事件の中で明らかになった雪希の秘密……
これはメタ視点で見て、何となく予想できた部分もあったのだけど、ここまでのエピソードでの後悔。ふざけていると思われた雪希の中にあった迷い。そういうものを知り、だんだんと惹かれていくのだが……。生きていることの大切さ、そういうものが感じられる話。そして、一度は消えてしまったその出来事がしっかりと活きているという結末は優しかった。
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