(書評)かがみの孤城

著者:辻村深月



ある出来事をきっかけに学校へと行けなくなってしまった中学生のこころ。家で過ごしている5月のある日、部屋の鏡が輝きはじめ、その先には城が……。集められたのは、こころと同じような境遇の7人の中学生。9時から17時の間だけ滞在が許されるそこで、ある課題が出される。猶予は1年間。そこに集まるうちに、7人は打ち解けていくのだが……
世界設定は結構、非現実的なものがあるのだけど、いや、だからこそこころをはじめとした少年少女たちの葛藤、気持ちが生々しく描かれていると感じる。その点でいうと、著者のデビュー作とかにも通じるものがあるんじゃないかと思う。
鏡の中の城へと入ることが許された7人の少年少女たち。鍵を見つければ、願いをかなえることが出来る、ということを言われるが、物語の多くは、むしろ、その城の中での彼らの交流が主として描かれる。とはいえ、主人公のこころ以外は、その背景などは深く掘り下げられるわけではなく、それぞれ、白の中でだけの交流。しかし、その中の交流にも、それぞれのキャラクター性、関係性が強く現れる。
とにかく、こころの不登校の状況が苦しい。学校でのいじめ。しかし、不登校というとで、父はこころに怒り、母は、こころが何とかなるように心を砕くのだが、それすらもが息苦しい。自分だって、行かねばならないとは思う。しかし、心、そして、体調がどうしても行くことを拒否してしまう。その中で出会ったのが城に集う面々……
よく「3人、人が集まれば派閥が出来る」と言うけれども、そこでの人間関係も錯綜していく。惚れっぽく、次々と女子たちに声をかけるウレシノ。容姿が優れているわけでもなく、しかも、節操のない彼の言動は、周囲からバカにされる状況に。ある意味、そうなるだろうと状況なのだけど、裏返してみれば、こころが学校で受けたことそのもの。さらに、先の学校にいけない状況の中、それでも、その後を、という中、塾に通う、とか、そういうものも一種のプレッシャーになっていって……。そのような中、時間は経過していき、それぞれの共通点が見え始めて……
この仕掛けについては、祝日についての会話とかから何となく予想は出来たのだけど、そこからの展開が怒涛。誰がどういう過去を抱えていたのか? そして、どういう意図があってそれぞれが集められたのか。
困っている人を助ける。言葉にすれば簡単なのだけど、同じ目線に立ち、悩みを共有して、というのは難しいこと。だからこそ、色々とあっても、こころたちは一つに繋がることが出来た。そして、その目線に立つというのは年齢とか、そういうものも関係なかった。こころたちを城に集めた存在の意思。それも含めて、何が大事なのか、というのを強く感じられた。
読んでいる最中は、息苦しい想いも多くした。けれども、読み終わってみると、その優しい世界観というのが印象に残った。

No.4654

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