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(書評)6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。

著者:大澤めぐみ



やりたいことが見つからず、漠然と都会を夢見る優等生・香衣。サッカー部のエースで香衣の恋人のはずの隆生。香衣に一目ぼれした不良・龍輝。ある秘密を隠しながら暮らすセリカ。そんな4人の物語。
過去2作、『おにぎりスタッバー』『ひとくいマンイーター』は、非日常的な要素を多く含んだ物語だったのだけど、今回は、現実的な世界観の中でまっすぐに描かれた青春小説。裏表紙のあらすじで「劣等感、憧れ、恋心、後悔」とあるんだけど、まさに、そんな感じ。
地元から少し離れた進学校に入った香衣。高校生になり、イメージチェンジも図ったが、仲の良い友達もおらず、美少女であるセリカだけが話し相手。そんなセリカの周囲との打ち解け具合にはかなわない、と感じ、同じ中学出身の隆生と一緒に受験勉強をし、近づいたはずなのに距離は離れるばかり。そして、それはセリカの隆生が好きかも、ということで、隆生との終わりを感じざるを得ない。
一方、サッカー部のエースとして活躍する隆生。しかし、彼の人生にとって、サッカーは決して「楽しい」ものではなく、むしろ、小さなころは体力に劣っていた彼にとって、試合に出ることすらできず、上手い者からバカにされる日々。エースと言われる現在も、そのことがなかったかのように接してくる周囲には違和感しか感じない。さらに、香衣との距離も離れるばかりで……
セリカについては、ちょっと特殊な家庭事情ということは出来るのだけど、ただ、じゃあ、全く荒唐無稽か、というとそんなことはなく、こういう人もいるかもしれない。そして、そんなこと以上に、それぞれが抱えている劣等感とか、そういうものは普遍的なものだと思う。いや、劇的な恋愛とか、純粋にスポーツに打ち込んで、不治の病で、とかではない。かといって、無茶苦茶にビターとか、そういうわけでもない。そういうものじゃないからこそ身近に感じるのかな? と思う。特に私のような劣等感の塊みたいな人間には(笑)
ある意味では、何かがあるわけではない。けれども、だからこそ、日常に寄り添ったリアルな高校時代とかを思い出させる。そんな作品じゃないかと思う。

No.4654

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