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(書評)声も出せずに死んだんだ

著者:長谷川也



ある日、レオナは殺された。現実には存在しないキャラクターであるレオナ。彼女の死を嘲笑った世間を戦慄させるため、千裕は計画を練る。犯行声明をWEB上にアップし、女子誘拐を決行するのだが……
第37回横溝正史ミステリ大賞・奨励賞受賞作。
なんか、この本を読んでいて、ネット黎明期のことを思い出した。物語の根本にあるのは、レオナというキャラクター。ネット上において、多くの人々が参加し、レオナというキャラクターについてのイラストや小説などを投稿し、知名度を上げ、アニメ化を目指す「レオナ・プロジェクト」。こういうの、昔あったなぁ、と感じる。というか、ボーカロイドを元に世界観を構築していくものと似ているかもしれない。主人公である千裕はそれに没頭していた。そして、そのプロジェクトは上手くいっていた……はずだった。しかし、あるトラブルによりそれは崩壊。それでもレオナを愛する千裕は……
物語は、千裕が、自殺サイトで「死にたい」と書いたことにより、星来という女性が相談に乗り、会おう、ということから始まる。星来とあった千裕は、星来を拉致する。しかし、星来の提案により、千裕が死んだら星来が死んだら千裕の勝ち、止められたら星来の勝ち、というゲームが開始されることに。
正直なところ、私自身は、それほど(現実か、非現実化か、は問わず)何かに入れあげる、っていうことはないので、あまり主人公の気持ちに共感することができないのだが、そういったファンサイトの運営の協力をしていたことはあるので、作中の状況とかもある程度、理解できるつもり。ただ、結構、この状況そのものが物語に入り込めるかどうかの障壁になるんじゃないかと感じた。そして、途中、星来によって千裕の過去とか、伏線となる部分を聞き出すシーンとかはあるのだけど、全体的には、(無理矢理)レオナのコスプレをさせた星来と千裕が色々と旅をする、というシーンが続く。主人公である千裕の独善的な思い込みとかがあり、かなり入り込みづらい。その辺で、冗長と感じるところがある。
ただ、終盤、その千裕の計画の本筋が見えたときの衝撃はかなりのもの。優等生であった姉の自死。その遺書においても、何一つ触れられることのなかった千裕の屈辱。そこで感じた自分の無力感と、そこからの暴走……。その辺りの破壊力は読みごたえがあった。
……まぁ、物語全体を通すと星来の事情についての掘り下げとかが足りないかな、と感じるところとかがあったりする部分もあった。先に書いた千裕の言い分とかも含めて、共感しづらいところとか、弱点はあると思うのだが、それをクリアできれば楽しめるのではないだろうか。

No.4657

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