(書評)ツノハズ・ホーム賃貸二課におまかせを

著者:内山純



新宿に本社を置く不動産仲介業者・ツノハズ・ホーム。居住用物件を扱う賃貸二課に所属する澤村のパートナーとなったのは、美人で成績もよいが、先輩使いが荒い神崎くらら。くららの言うままに、大家と店子の間を駆け回ることになるが、そこには不思議な事件が次々と現れて……
という連作短編集。全4編を収録。
まず思ったのは、過去2作とは大分、趣を変えてきたな、ということ。そんなに暗い話にならない、という点では共通しているのだけど、これまでのエピソードというのはある店の周辺で事件が起こり、それを常連たちがあーでもない、こーれもない、と仮説を出し合い、真相に迫っていく、というスタイル。しかし、本作の場合、澤村とくららが、不思議な出来事が起きた中、関係者に話を聞いたりしながら謎を解く、という形になっている。
例えば1編目『大家の事情』。澤村が担当をしているアパートから、住居人が賃料未納で逃げ、大家はライバル会社に移ろうとしているらしい。そこでその大家の元へ行ったのだが……。喫茶店勤務という賃借人が実はキャバクラ嬢だった、とか、その賃借人の元へストーカーが現れていて……とか、そういう情報から導き出されたのは……。不動産関係の蘊蓄とかも交えた形で、なるほど、と素直に納得できた。
個人的に好きなのは2編目『入居者の事情』かな? 緑色の虫が出る。上の階の人間の騒音がひどい。管理人が一部の住人だけをひいきする。次々と澤村の元に入れられるクレーム。管理人はちゃんといるのに、なぜか澤村が振り回されることになって……。一つ一つの謎は小粒と言えるのだけど、それらが錯綜しながらのトラブルシューティングが楽しかった。
そんな中、ちょっと毛色が違うのが4編目の『その土地の事情』。文字通り、土地の過去とか、そういうものを巡っての物語。大手製薬会社の創業者一族が持っている土地。その土地でかつて起きた汚染問題と、その研究者が死の直前に取り乱した事件。その謎は……。ここまでのエピソードでは、基本、良い人ばかりで、日常の謎レベル(犯罪もあるけど)な話の中で、決して悪意からではないにせよ、シリアスな事件なども含まれていて印象的だった。
……ところで、主人公の澤村は、くららのことを見た目や気の強さからタスマニアデビルから「デビル」と心の中で読んでいるのだけど……画像検索でタスマニアデビルを検索して、わかったような、わからないような……(笑)

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