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(書評)黒豚姫の神隠し

著者:カミツキレイニー



沖縄本島からさらに遥か南に位置する孤島・宇嘉見島。人をかどわかす黒豚の悪神・ウヮーガナシーの伝説があるこの島で、映画好きの少年・ヨナは、秘密めいた転校生・波多野清子の歌声にほれ込み、彼女を主役とした『オズの魔法使い』の映画を撮影しようとするのだが……
良いファンタジー作品だな。
物語は、冒頭に書いた通りの形で始まる。最初は、映画を撮りたい、として清子の周辺を撮影。そこで見たのは、普段の周囲を寄せ付けない態度とは全く違う、素直な笑顔。そして、意外と食いしん坊な姿。そんな彼女にますます惹かれていくのだが、そんなところで、清子に告げられたのは、自分は黒豚に呪われており、死んでしまった黒豚に変わり、穢れを食べるよう迫られていること。そんな彼女の秘密を知り、彼女を守ることを決意するが……
物語の本筋としてはそんな感じになるのだけど、何よりも良いのは、それぞれの日常の描かれ方。
何もなく、閉鎖的な島にうんざりし、東京へと行きたいというヨナ。しかし、良い意味でおおらかな大家族で、ちょっと変わったところのある清子を連れて行っても何事もないように食事を共にし、受け入れていく。この辺り、いかにも南国のおおらかさとか、そういうものを感じさせる。一方、清子の家。一緒に住む母は、常に清子のことを心配し、彼女にあれはするな、などと忠告をする。と、書くと過干渉な、毒親のような印象になるかもしれないけど、そうではなく、清子が普通の生活をすることができるよう守るための愛情そのもので決して嫌味ではない。
そんな日常を過ごすが、しかし、清子に穢れを、という動きは活発化するのみ。そこで、二人は、それをやめさせるよう、神の世界へ……
「神はそこにいるだけ」
そんな台詞があるのだけど、まさしく、神と言っても色々。我がままで自分勝手で、特に人間のことを考えているわけではない。そんな神々の姿に触れて……。この辺り、日本というか、本土でも八百万の神なんて言われるけど、そんな世界観と先にも書いた南国のおおらかさみたいなものが同居している感じがする。そして、そんな中で、清子が本当に隠していたことが判明して……
何をしたけどダメだった、という清子。しかし、ヨナの「俺が出会ったのはお前」、清子の母の実は知っているうえでの言葉。それを聞いての神々の方針転換。ヨナたちの決意の強さと、結構、脱力ものの神々の態度。なんか、拍子抜けっていう部分もあるけど、それもまた、ここまで書いてきたおおらかさというのが感じられて作品の雰囲気にあっている。
作品の舞台である沖縄(それも遥か孤島) それを上手く作品本編に取り入れた良質のファンタジー、ボーイミーツガール作品だと思う。

No.4661

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