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(書評)閻魔堂沙羅の推理奇譚

著者:木元哉多



様々な事情で死んだ人々。そんな死者の前に、現れる閻魔大王の娘・沙羅。生き返りたい事情を抱えた彼らに、沙羅はゲームを持ち掛ける。10分以内に、真相を解き明かせば願い通りに生き返らせる。しかし、解き明かせることが出来なかったら地獄生き……。そのゲームに彼らは参加して……
という連作短編集。
第55回メフィスト賞受賞作。
著者のデビュー作になるわけど、読みながら思ったのは、何か、すごく手馴れているな、という感じ。物語の設定としては、冒頭に書いた通り。
各編、まず、それぞれが最期になるまでの時間が綴られる。そして、気づいたら沙羅の前にいてゲームを持ち掛けられる。そして、最初の時間のことを思い出しつつその真相について考える。そして、披露する。まぁ、主人公の一人称で綴られるものなので、わからないところは当然にある。でも、沙羅の方もそこまで厳密ではなく、おおむねあっていればOKという形という甘さもある。
この中で、一番、論理的なのは1編目かな? 厳格な父親と喧嘩をし、家出をした中学生の智子。友達の家に泊めてもらおうと思ったら断れら、付き合い始めた同級生に連絡を。部活の部室で待ち合わせをするも、ちょっと目を離した隙に彼がクラスメイトに借りたらしいエロ本と、ビデオカメラがそこに。それが原因で喧嘩をしてしまうのだが、その直後に何者かに殺されてしまって……
エロ本は、学校で教師に見つかって没収されてしまった。その時間、自分が部室にいたのを知っているのは? そもそも、自分を殺せたのは? そんな中での結論……。細かいところはともかくとしても、ちょっとした違和感とか、そういうのを通り越しての真相で作品の雰囲気を上手く示せた話だと思う。
ちょっと変化球であったのは3編目。老衰で死亡した老婆。嫁入りした呉服屋では、自分に主導権はなく、息子は演劇がしたいと家を飛び出し、現在は音信不通。それでも、養子夫婦やらに恵まれ、幸せな最期だったはず。だからこそ気になるのは、息子はどうしているのか?
そもそもが、殺人じゃない。それに、普通に考えれば、息子のことなんてわかるわけがない、ともいえる。けれども、沙羅の一言で推理できる、ということが判明し、そこから考えていく、というのがまず変化球。そして、何よりも、登場する人物がそれぞれ優しい面々であり、真相が判明し、わずかながらの生き返りの時間も全てが幸せに満ちた形。すごく優しい世界観に包まれた。
ネタバレと言えばそうなのだけど、各エピソードとも、それぞれ、見事、真相を解明し、生き返る。先に書いたように、3編目はすぐに……なのだけど、それ以外のエピソードも、その「生き返った」ということがしっかりと糧になり、ちゃんと前を向いて歩みだす形に。そのため、読後感も良い。
メフィスト賞らしい「とがった感じ」は薄いかも知れない。でも、しっかりとまとまった佳作だと思う。

No.4710

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