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(書評)三国破譚 孔明になったけど仕えた劉備は美少女でゲスでニート志望だったの事

著者:波口まにま



三国志好きの少年・中原天人はある夜、夢で諸葛亮孔明と出会い、「余命短い自分に代わり、劉備に仕えてほしい」と頼まれる。その願いを聞き入れた天人の前に現れた劉備、関羽、張飛は全員美少女!? なんと、男性が極端に少なく、著名な武将たちが全員、女性という三国志の世界に召喚されてしまったのだった。しかも、聖人君子と思われた劉備は、曹操と戦うどころか、楽して暮らしたいと願う存在で……
第19回えんため大賞・優秀賞受賞作。
帯では『一騎当千』シリーズなどの塩崎雄二氏が「既成概念の完全崩壊(笑)」というコメントを出しているんだけど、私の評価としてはむしろ……
真面目か!
くらいにしか思えなかったり。
三国志を題材にした作品というのはそれこそ山のようにある。吉川英治氏の作品などはスタンダードとして定着しているし、自分がブログで扱った中でも、北方謙三氏とか、吉川永青氏とかが題材として描いている。そして、その中で、劉備をはじめとした武将たちがどういう存在なのか、とかについては様々な解釈が試みられている。……正直なところ、この作品も、その「解釈」の範囲内くらいとしか思えない。
冒頭に書いたように、貧乏暮らしをしていた劉備が自分の家系図を見たら、どうやら漢王室の末裔らしい、と知り、それを利用して名を挙げたら皆からちやほやされ、色々と貰えるようになった。ところが、その手前、漢王室復興のために担ぎ上げられてしまった……というもの。これって、劉備の解釈として十分にアリだと思う。
そして、物語は孔明が劉備陣営に入ってから、なので、長坂の戦い、孫権陣営との論戦、そして、赤壁の戦い……といった歴史上、というか、三国志演技の流れに沿った形で展開していく。孔明と入れ替わりに曹操陣営に行くことになる徐福(徐庶)を説得して劉備陣営に残したり、長坂の戦いで孔明が阿斗ポジションになったり、なぜか苦肉の策を孔明自らが実行してみたり……という改変はあるものの全体の流れはモチーフのままであり、武将が美少女だ、という以外は結構、真面目に三国志をやっているな、という印象が強い。
そもそも、劉備自体が「ダメ人間」でも何でもないと思えるのは私だけ? 楽して、働かずに暮らしたい。これが本音としても、自分のイメージがこうだから、というのを理解して、いざというときはちゃんと「聖人」としてふるまう。こういうのって誰にでもあることだし、自分のイメージがこうだから、と言ってもいざというときそう振る舞うことは出来ないわけで、むしろ、人間臭さをプラスしているように感じる。
こういうと何だけど、著者ってすごく真面目で、三国志が大好きな人なんじゃないかと思う。っていうのは、三国志演技における各武将の人物像とかはかなり勉強しているし(曹操に下る前は、一般的に名の知れた徐庶ではなく、徐福という名前だったとかはその一例)、細かなところはともかくとして、全体像としてはそのイメージを壊さないような物語作りをしているから。
ただ言い換えれば、もっとはっちゃけても良かったんじゃないか、という気もする。武将たちが美少女で、とか、そういう設定がそこまで活きていると感じられないのだ。
あまりはっちゃけすぎると三国志ファンに怒られる、とか、そういうこともあるのだろうし、この作品に何を求めるのか、にもよるとは思うが……

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