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(書評)盤上の向日葵

著者:柚月裕子



さいたま市郊外の山中で発見された白骨遺体。唯一、残された手がかりは、初代・菊水月の駒。それから4か月。事件を捜査する佐野と、石破は山形県天童市へと向かう。そこで行われるのは、天才棋士と異色の騎士によるタイトル戦……
世間では、藤井聡太棋士の快進撃があったり、はたまた、ラノベの世界では『りゅうおうのおしごと』が大人気だったり……と、将棋の世界が色々と話題になっている中での本作。これも、将棋を題材にした作品。とはいえ、純粋に棋士の世界とか、そういうものではなくて、そこからちょっと外れた世界を垣間見せる物語と言える。
物語は、2つのパートによって構成される。1つが、白骨遺体を巡る事件を捜査する刑事・佐野と、石破コンビによる物語。そして、もう一つが、タイトル戦に挑むことになる異色の棋士・上条桂介を巡る物語。分量的には半々くらいなのだが、物語の中での比重という意味では断然、後者の部分が大きいと言えるだろう。
とにかく印象的なのは、犯人である(ネタバレになるけど、初期からわかるはずなので書いちゃう)上条の人生である。極貧で、虐待を受けながらも、唯一の家族である父から離れることのできなかった幼き日。そんな父を見限って旅だった学生時代に出会った、勝負師(賭け将棋で生計を立てる人間)東明との関係。そこが何よりもの物語のポイントと言える部分だろう。
東明と上条の関係は、決して友好的とは言い難い。初めて出会ったときから、その戦術に心を奪われ惹かれてしまう。しかし、決して友好的な関係にはならず、上条にとって常に裏切りの危険性を伴った相手。心を許せる相手ではない。しかし、いや、だからこそ離れがたい魅力を示す。それによって手痛い裏切りをされたとしても……。そして、そんな東明が人生の最期に示した恩返し、そして……
アングラな世界で生きてきた東明と、彼に魅了された上条。その愛憎にまみれた関係。そんな関係の先で上条を待ち受けたタイトル戦の結末は……。狂気に彩られながらも、上条の、そして、東明の人生をじっくりと描いてくれた作品に仕上がっている、と感じた。

No.4736

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