(書評)タイムシフト 君と見た海、君がいた空

著者:午後12時の男



始まりは夏休み最後の日。道に迷っていたレキは、民家の庭木に上り猫を助けようとしていた少女・リノと出会う。探偵業などを営むカリナの家で共に居候することになった二人は、だんだんと惹かれていって……。しかし、この世界は大きな不具合を抱えていて……
なんか、だんだんと置いてけぼり感を感じてしまった、というのがどうしても思うところかな?
物語の冒頭で、レキの目の前から、リノ、カリナが消えてしまった、という描写から別れが訪れる、というのが判明したところから物語が開始。そして、この文章の冒頭で書いたようなレキとリノの邂逅となり……
最初から離別が分かっている中で、だんだんと心惹かれあっていく二人。その中で、だんだんと作品の世界設定も明らかになっていって……
物語の舞台は栄田市という街。世界は、数百年前に大凍結と言われる事件が起こり、人々が極端に減り、その大凍結の影響か、栄田市では奇妙なことが起きていた。それは、人々に危害を与えるわけではないが、町を彷徨うオヘンロサマという黒い影があったり、はたまた、人類の中で特殊な力を持つカムナギという存在がしばしば現れる。そして、レキは、他者の記憶、心情が自分の中に入り込む、というカムナギで、また、リノは物理的にはあり得ない超能力のようなものを持つカムナギ。レキの妹、さらに友人たちもまた、カムナギとしての力を持っていた……。それでも、平穏な日々を送っていたのだが、その友人が「消えて」しまって……
この辺りまでは、ちょっと変わった能力(呪い)を持つ、少年少女のボーイミーツガールものとして素直に楽しめたし、その中で、レキにぞっこんな妹の存在とかも、そのアクセントとして良い感じだったのだけど……
いきなりそこから、SF的な世界観へと文字通り「シフト」してあれ? という感じに……
いや、所謂叙述トリック的なものとして考えられたものなのかもしれない、とは思う。思うのだけど、終盤、それが一気に判明することによって世界が反転する、というより、だんだんと小出しに世界観が説明され、しかも、主人公たちはそれを理解している、というところでどうにも……という感じになってしまったのだ。そもそも、レキは、この世界観について知っていたのか? いつ知ったのか? とか、そういうのがよくわからないから。なんか、その世界観が判明する爽快感などがあまり感じられなかった。
それでも、最後の秘密を知り……という切なさとかはなかなかのもの。それだけに、世界観を明らかにするタイミング、演出といったものがもうちょっとうまく処理されていてほしかったな、と感じる。

No.4750

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